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カイロプラクティック

言説の一般的概念や通念の説明

語句説明

 カイロプラクティックとは、骨格の歪み、とくに背骨の歪みを手技によって矯正し、神経生理機能を回復し、健康を増進させようとする治療法である。薬物や外科的治療を行わず、脊椎と神経の関係に重点を置く医療である。
 アメリカなど諸外国では法制化が進んでいるが、日本では法律が未整備であり、専門的な教育を受けていない誰もがカイロプラクティック医療を行うことができる。そのため、それを行うものによって定義が異なるが上記が狭義の意味での国際的な規格である。

効果の作用機序を説明する理論の観点

理論の論理性 (中)

 カイロプラクティックはサブラクセーション(椎骨の変位)を治すということが理論的根拠となっている。サブラクセーションが神経系に悪影響を及ぼし病因となっているというのがカイロプラクティックの基本的な考え方であり、そのためカイロプラクティック治療は脊椎のアジャストメントが主体となっている。
 では、そのサブラクセーション¹とは一体何かということだが、それについては生理学的、解剖学的、神経学的に研究が進められている。一般的には、骨格・神経・筋肉の三つが同時に不正常状態であることが基本概念であり、現在の研究では、体性反射、体性内臓反射、内臓体性反射など反射を基軸とした生理学的な解明も進んでいる。

1ただし、2010年のイギリスのレポートによると、イギリスでは事実上サブラクセーションの概念がなくなり、その言葉を使用するときは歴史上の言葉として使用する以外は認められなくなっている。

理論の体系性 (高)

 サブラクセーションによって神経の流れが乱れており、そのため腰痛などの痛みが生じる、といった説明は特に不自然なものではない。また、「腰痛」と一口に言ってもその病態はさまざまで、通常医学においても乱立する説明のなかではむしろ合理的であるといえる。
 たとえば椎間板ヘルニアでは、通常医学では定説²に従って診断し、特に画像診断(X線、MRI等)を最も重視する。しかし、画像診断上はヘルニアの初見があるが「痛みはない」といった整形外科の定説だけでは説明のつかない症例も多々ある(1)。
 カイロプラクティックの理論は「背骨のサブラクセーションをアジャストメントすることによって神経の働きを正常化し症状を改善する(1)」が根幹となっており、逆にサブラクセーションが正常である症例は、カイロプラクティックの対象ではないとしている。
 つまり、サブラクセーションを解消しても腰痛が続くようであれば、それは筋肉・骨格系以外の症状であるとしたうえで内科など別分野にゆだねることができ、諸説入り乱れている腰痛に関する医学の体系を整理できるという利点があるのだ(1)。
 このほうがある意味で「説明責任」を果たしているとさえいえ、むしろ将来的に体系性を推し量る指標にもなりうるだろう。

2椎間板ヘルニアの整形外科の定説では、腰椎の椎間板から脱出した髄核が、脊髄神経を圧迫あるいは脊髄神経に接触するために、激しい痛みが出現する症状とされている。中にはヘルニアが自然に消滅するものもある(2)。

理論の普遍性 (中)

 たとえば、癌や伝染病治療に関しては正統なカイロプラクティックは禁忌として扱っているが、万能の治療法としてカイロまがいの治療を行っている自称カイロプラクターも多く、そのような言説では普遍性を装っていることが見受けられる。万能性を謳い、そしてたとえ症状が改善されたとしても、それは「プラシーボ効果」以上の意味をもたない。
 カイロプラクティックにおいて広く受け入れられている効果としては、腰痛や頭痛、神経痛といったものが挙げられる。

実証的効果を示すデータの観点

データの再現性 (中)

 実験データからみた治療効果としては、腰痛、頚部痛に効果があるとした報告が多数あり、特に急性腰痛(以下「ぎっくり腰」)の苦痛を取り除く治療法として、非ステロイド系消炎鎮痛剤とともに安全で効果的だとの見解をアメリカ医療政策局などが示している(3)。
 内臓機能低下などの効果があるとする研究もあるが、どちらかというと否定的な見解に落ち着いている。

データの客観性 (中)

 医学研究の客観性においては臨床研究データの集積によって評価されるが、他の医療行為との条件面の違いや、カイロプラクターのデータに対する姿勢が起因となって、具体的な数字データを公表せずに口頭でのみ「治した」と称することも多い。とくに、日本では法制化が進んでいないため、そのような傾向が強い。
 一方、アメリカなど諸外国では、中立的な調査機関のもと、臨床データをもとにした対照実験なども行われ、その有効性が示唆されている。

データと理論の双方からの観点

データ収集の理論的妥当性 (低)

 カイロプラクティックによる効果には「痛みの軽減」など、その性質上、どうしても主観的にならざるを得ない面が多々あるため評価しにくい。また、主に臨床医学に根付いていることもあり、整形外科を受診した時との「満足度」の比較といったあやふやな指標が用いられることもある。

理論によるデータ予測性 (中)

 カイロプラクティックの予測性は、適応範囲によって評価が異なる。整形外科分野では理論に合致したデータが収集できているが、内科系疾患については理論、データともに不足しており、予測できる研究が行えるとはいえない。

社会的観点

社会での公共性 (中)

  カイロプラクティックの公共性を評価するうえで最も考慮しなければならないのは、日本と諸外国(アメリカなど)では評価が大きく異なることである。そのため、ここでは両者を比較しながら検討する。  
 現在の日本において、カイロプラクティックの少なくとも法整備面は良好であるとはいえない。日本でのカイロプラクティック治療は「疑似医療行為」とみなされ、特定の教育、資格の認定を受けなくても、誰でも「カイロプラクター」を名乗ることができる状況となっている(1)。そのため、自称カイロプラクターが横行してしまっている(4)という問題を抱えており、その解消は急務だろう。
 ただし、前述の法整備面の不足には、鍼灸や指圧など、他の代替医療行為の利便性によってカイロプラクティックの大衆化が遅れたという背景もあるため、「科学的根拠に乏しい」といった検証が十分に議論されたうえでの判断であると一概にはいえない。
 一方、アメリカや欧州において、カイロプラクティック治療は一定の社会的信頼性を得ており、教育、資格、認可の法制度も整っている。 たとえば、アメリカにおいては大学で理系科目を90単位以上取得したのち、4年制の専門教育と資格取得をカイロプラクターに義務付けており、公共性を保つための制度化が進んでいる。
 また、WHO(世界保健機関)はカイロプラクティック治療を「代替医療」としてカテゴライズしており、世界各国における関連団体の認可等を行っている。こうした状況によって、日本においてもWHOの認可団体に加えられたものもあり(日本カイロプラクターズ協会)、国際基準に合わせる動きが進んでいる。
 今後、自称カイロプラクターの淘汰や難病、奇病に効果があるなどの誤信を解いていく積極的な姿勢が、日本では求められるだろう。

議論の歴史性 (中)

 カイロプラクティックは1895年、アメリカ人のD. D. パーマーによって創始され体系化した。西洋医学との理論構築上の相違点などから、その後の普及にともなって伝統的な西洋医学、とくにアメリカ医師会からの激しい反発にあった。
 大きな転機は1990年における最高裁判所の判決で医師会が敗訴したことであり、その後アメリカにおけるカイロプラクティックは研究、議論が重ねられ独自の立場を築くに至った(1)。
 そのため現在のアメリカでは、通常医学の医師がカイロプラクターを紹介するケースや、カイロ治療が医療保険適用される疾患もあるといった医学界との共存も図られている。

社会への応用性 (中)

 日本におけるカイロプラクティックの応用性は、好意的にみても高いとはいえない。公共性の項目でも記述したが、自称カイロプラクターが横行していることが主因である。効果がどれだけあったかの判断を完全に「個人」にゆだねてしまっており、社会的なコントロールがとれていない状況にあるといえる。
 一方で海外では、カイロプラクティック自体の実績には一定の評価がされており、アメリカ健康政策局の『腰痛ガイドライン』ではカイロプラクティックのぎっくり腰への有効性を認めている(1)。
 ただし、やはりまだ日本では、カイロプラクティックに関する信頼形成が不十分であることは否めないだろう。

総評

発展途上の科学

 現在国際的に最も正統とされる西洋医学(通常医学)でさえ、作用機序などが解明されている部分はそうでない部分に比べて取るに足りない範囲であり、整形外科分野はその最たるものといえる。
 その中で科学性という面に目を向けると、カイロプラクティックは未科学もしくは発展途上の科学として位置づけることができるだろう。それは、客観的に判断された再現性の高いもの、合理的な説明のある論理的なものであるといえるからだ。
 ただし、西洋医学とは違い、その効果が数値化しにくい側面があるため、科学性に疑問がもたれているという事実もまたある。特に法制度化の進んでいない日本では、カイロまがいの医療行為を行う自称カイロプラクターが多くおり、それがカイロプラクティック全体への誤解や偏見につながっていることが推察される。
 法制度については、特に日本ではカイロプラクティックは一切が保険適用外であるため費用に対する効果が十分得られるかどうかに注意を払う必要がある危惧も、現状では残っている。
 カイロプラクティックの適応範囲などの正確な情報の共有化がなされれば、一般への理解も高まり、さらなる科学的な発展も見込めるだろう。

参考文献:

(1)『整形外科医が書いた正しいカイロプラクティック』 竹谷内宏明
(2)『臨床医マニュアル 第4版』 臨床医マニュアル編集委員会
(3)『医療従事者のための補完・代替医療 改訂2版』 今西二郎/編集
(4)『誰も教えてくれない[整体・カイロ・治療院]の始め方・儲け方』 荒田顕司
『これがカイロプラクティックだ』 竹谷内宏明
『代替医療のトリック』 サイモン・シン

情報提供、コメント、質問を歓迎します。

(最終更新日時2015年9月16日)

投稿

投稿&回答

これまでカイロ治療に行くと調子がよかったのですが、やめたほうがいいでしょうか? (投稿者:swc)

調子がよかったということは、あなたの症状の改善にこれまでは効果があったということです。万能ではないので、今後の別な症状にも効果があるとは限りません。様子をチェックしながら、慎重に利用することをお勧めします。

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一般社団法人日本カイロプラクターズ協会(JAC)
JACによる2010年度カイロプラクティック研究報告
カイロプラクティック基礎教育と安全性に関するWHOのガイドライン
パーマーカイロプラクティック大学
米国認定ドクターオブカイロプラクティックの認可校の一つ。米国には他に16の大学、専門学校がある
カイロプラクティック研究の情報ページ
世界カイロプラクティック連合(WFC)
世界88ヶ国の代表団体から構成されWHOのNGOに加盟、世界保健総会にオブザーバーとしての参加が認められている
厚生労働省 「統合医療」情報発信サイト
カイロプラクティックについての科学的研究情報
コクラン・レビュー・アブストラクト
統合医療情報発信サイト
The WFC suggested reading list for chiropractic
National Board of Chiropractic Examiners Practice Analysis