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磁石磁気治療

言説の一般的概念や通念の説明

語句説明

 本言説は、磁気ネックレスや永久磁石を皮膚上に貼付することで、その磁場により患部の血行が促進され、コリを低減できるという説である。
 日本では『磁気治療器』という名称が用いられ、薬局などで広く販売されている。コリ(肩や腰)の原因となる疾患は多様であり、その中には整形外科分野以外の領域(内科分野や精神科分野など)も多い。そのような疾患に対しては磁気治療に限らず、対処療法では根本的な解決にはならない。そのため、本項目においては単純なコリ(加齢、疲労、ストレスを起因とするもの)のみを評定対象とし、前述のような特定疾患への有効性については考慮しない。また、磁気治療器においても「永久磁石」を用いたものを中心に評定することとし、(話題の展開上多少言及することはあるが)交流磁界による磁気治療器については基本的にその対象としない。

効果の作用機序を説明する理論の観点

理論の論理性 (中)

 コリンエステラーゼ抑制説、ヘモグロビン酸素放出促進説など、論理的にあり得る仮説は存在するが、その結果コリの低減が起こるところまで説明できているとは言えない。

理論の体系性 (低)

 『磁気治療器』を法律や歴史的側面から捉えると、初期の研究においては科学的な厳密性よりも社会的な時勢によって理論構築がされていたことが覗える。
 昭和36年、日本において現行の薬事法が施行され、その中で『磁気治療器』は『管理医療機器』として区分された。その根拠としては、当時医師の中川恭一によって発表された研究が主なものだった。しかし、この研究はいわゆるアンケート調査のようなものであり、十分な臨床試験が行われていたとはわけではなかった。
 そもそも、医療機器区分の基準は、効果効能を保障するものというよりは“リスク”を管理するための意味合いが強く、その文脈において医師などの管理者とはリスクを管理するものと解釈できる。さらに現在、家庭用医療機器として販売が許可されている磁気治療器は磁力が35ミリテスラ~200ミリテスラまで(これは交流磁界による磁気治療器の規定であり、本評定の中心である永久磁石とは区別される)であり、例えばMRI機器などの1テスラ~3テスラと比べると非常に小さい力であることもわかる(日本の地磁気はおおよそ45マイクロテスラであり、それぞれの単位を比較すると、1マイクロテスラ×1000倍⇒1ミリテスラ×1000倍⇒1テスラとなる)。
 そのため、永久磁石磁気治療器ぐらいの磁力によって、良いにしろ悪いにしろ健康に影響があるとすると、MRIなどの医療機器由来の強力な磁気では身体的影響が見られないという事実との整合性が悪い。

理論の普遍性 (中)

 磁気による体への影響が検出されるのであれば、普遍性をもった理論となりうる。現在は作用機序の解明も行われていないため、当然ながら、一般的に成立した理論とはなり得ない。

実証的効果を示すデータの観点

データの再現性 (中)

 磁気による健康増進効果についての研究は限定的で、十分な研究がそろっているとは言い難い。その限定的な研究結果の範囲では、健康増進の効果がないという仮説の方が有力である。
 また、少なくとも現在の医学生の教科書レベルにおいて磁気治療器についての記述は皆無であり、十分なエビデンスがあるとは言い難いのが現状である。
 ただし、若干ではあるが肯定的な結果が出ている論文もあるため、再現性は中程度と評価する。

データの客観性 (中)

 科学論文の発表もあり、第三者の検証を受けられる状態で研究が発表されている。但し、論文は発表誌も限定されている。確実に効果があるとする論文は、質の低い論文となっている。効果を否定する論文も特定の効果(血流の変化、痛みレベルの変化など)に特化した研究に限定されており、コリの低減に限定しても十分に研究されているとは言えない。
 初期の研究において効果があるとするものは、主観による判断が大きいので、確証バイアスが疑われる。
 このように、使用者のアンケート調査のみによってその効能が主張されていた初期研究だったが、現在では血行の促進を測定するためにサーモグラフィー等が用いられている研究もある。
 ただし、全体の水準としてはまだばらつきが見られ、前述したように研究論文の発表誌は限られており、主要な医学誌で、積極的かつ肯定的に発表されているものは見受けられないことは繰り返し述べておく(少なくとも日本においては)。

データと理論の双方からの観点

データ収集の理論的妥当性 (低)

 提唱されている仮説が具体的でなく、どの種類のコリが、どのくらいの磁気で、どの程度の時間で改善可能かを説明していないので、どんな実験をしてどんなデータを収集すればよいのか、わからない段階である。

理論によるデータ予測性 (低)

 効果があるとすれば予測可能であるが、これまでの効果の出ないとする研究は予測が失敗している例とみなせる。本言説においては、再現性などのデータ面に対し理論構築が遅れており、有力な仮説が待たれている。

社会的観点

社会での公共性 (低)

 現在の日本の薬事法では家庭用磁気治療器に対する規制はないに等しく、医師などの医療従事者の許可がなくとも購入できる仕組みとなっている。(※平成26年度の薬事法一部改訂により薬事法は『医薬品医療機器等法』に改名されたが本項では一般への認知度を重視し、薬事法という表現を用いる。)
 製品自体は薬事法の規制を受けるため、管理医療機器としての認可を受けなければならないが、『磁気治療器』は管理医療機器カテゴリー内の家庭用医療機器として法的には区分されており、新たな効能を謳う製品でなければ、その製造、販売に法的な拘束はほとんどないといってよい。(同じ家庭用医療機器に区分されているものには、例えば避妊具(コンドーム)やマッサージ器などがある。)
 誤解を恐れずに言えば、現在の日本の薬事法では家庭用磁気治療器に対する規制はないに等しく、医師などの医療従事者の許可がなくとも購入できる仕組みとなっている。ただし、製品自体は薬事法の規制を受けるため、管理医療機器としての認可を受けなければならない。
 このように、法の施行と運用が乖離している現状において、磁石磁気治療製品の有効性はその開発業者に委ねられている場合が多く、誇張であるといえる強い有効性を主張しているものも多い。
 また、磁石磁気治療を系統的に研究している団体も確認できず、様々な言説が散見している状態となっている。以上から、社会での公共性は低いと評価する。

議論の歴史性 (低)

 体系性の項目と重複するが、昭和36年、『磁気治療器』は医療機器として区分された。その根拠は、当時の研究を基にしたものからであったのだが、それ以来、言説に対する抜本的な議論は行われてこなかったと言ってよいだろう。
 それが近年になって、医療技術の目覚ましい発展や、社会的な関心の高まりによって再び『磁気治療器』等に“再確認”の風潮が高まっている。その中において、現在のEBM(根拠に基づいた医療)に照らし合わせると、本言説がその水準に十分に達しているとは言い難く、よく議論されてきたものとはいえない。
 よって議論の歴史性は低評価とするが、本言説においては今後の活発化を期待したい。

社会への応用性 (中)

 現時点で、健康有効性について個人が実感できるほどの効果はないとするのが妥当である。肯定的な研究成果も出てはいるが、再現性や有効範囲についてはまだまだ検証不足だといえる。ただし、基礎研究において現代の科学的手順を踏襲したものもある。その点を考慮して、応用性は中程度と評価する。

総評

未科学

 効果があるという論文は存在するものの、多くは質の低い論文にとどまり、科学的な根拠として十分ではない。効果を否定する論文も限定的であり、徹底的な研究に発展する兆しがまだない。客観的な効果の評価は未科学だが、現時点で「効果がある」ことをコリ軽減以上の病態や疾患に対して積極的に主張するのならば疑似科学と呼んでもいいだろう。
 またコリ軽減についても、その効果があるとしても、他の湿布薬や服用薬にくらべて高い効果が見出されてはいないという段階である。

参考文献:

『皮膚貼付用磁気治療具 その治療効果について』中川恭一(厚生労働省)
No Effect of 85mT Permanent Magnets on Laser-Doppler Measured Blood Flow Response to Inspiratory Gasps (2005)
Assessment of the short-term effects of a permanent magnet on normal skin blood circulation via laser-Doppler flowmetry (2002)
『よくわかる改正薬事法医療機器編: カラー図解』薬事日報社
『磁石と生き物 からだを磁石で診断・治療する』保坂栄弘著 コロナ社(1999) 

情報提供、コメント、質問を歓迎します。

(最終更新日時2015年8月17日)

投稿

投稿&回答

薬の場合は服用するだけでよいが、一般論として物理療法の場合は、鍼灸のツボのように、どのような作用を、どの部位に加えるか、ということが重要なのです。患部に作用を加えるだけでは効果は極めて小さいか、効果がありません。それが分かっていないために、物理療法は効果があるという人もいるが、効果はない、疑似科学と批判されてしまうことになる。

結論を言えば、現代医学以上の効果があります。治療法は、すでに法則・理論として確立している。






(投稿者:maprmed70,投稿日時:2015/11/24 09:20:44)

maprmed70さん
磁石・磁気治療に関しては不明瞭な面も多いかと思うのですが、たとえば、どのような症状、あるいは疾患に対しての法則・理論が確立しているのでしょうか?
また、もしそうであるならば、臨床試験などのデータをお教えいただければ幸いです (回答日時:2015/11/27 13:19:50)

掲載されないでしょうけれども、この論文めいた感想文でなにを語りたいのか。
現実に試したわけでもない、単に本を読んだ印象で語っているだけ。
学問とはとうてい呼べないですよね。
明治大学の名前を出して、こんな子供みたいな文章をたくさん掲載して恥ずかしくないのかな。 (投稿者:とおりすがりの治療者,投稿日時:2015/11/17 11:50:30)

とおりすがりの治療者様
本研究は科学コミュニケーションの増進を図るものであります。
そのため、閲覧者様方からの情報提供により、よりよいものへとなるような仕組み作りを考えていきたいと思っています。
たとえば、磁石磁気治療の理解分析にかんしては何かよい方策はありませんか? (回答日時:2015/11/18 12:50:15)

初めまして。磁石磁気治療の項を興味深く読ませていただきました。
 実は、上腕骨を2年前に骨折し手術しましたが、半年くらい前から、ネジで留めている骨頭部の骨片が壊死してきている可能性があると医師に言われています。
 大学病院では、経過を見て、金具がむき出しになるくらい骨片が消滅してきたら人口骨に置換する手術をしなければならないと言われています。

 ここからが本題ですが、骨は血流がよければ再生すると聞いたので、民間の整体院でサプリと交流磁気による治療(交流磁気器のレンタル)を行っています。病院では、様子見以上のことはできないと言われていますもので。
 磁石磁気治療は気休めのような気がしますが、交流磁気治療についてはどうお考えでしょうか。毎月の治療費も馬鹿にならないので、継続するかどうか非常に悩んでいます。
 ちなみに、3カ月程度治療した結果は、骨の壊死はゆっくりになっている(止まっている?)感じもしますが、肩関節まわりの筋肉は衰え、時にはスジの痛みもあって、血流が劇的に改善されている実感はありません。
  (投稿者:K・J,投稿日時:2015/07/30 11:56:44)

K・J様
ご投稿ありがとうございます。
それは本当にお困りですね。
「交流磁気治療器」については、永久磁石磁気治療よりは”磁気が強く身体に届く範囲も広いだろう”とはいえそうです。ただ、それで実感できるほどの効果(期待される効果)が得られるか、というと、それは全く別問題とお考えになってよいかと思います。
「科学的か否か」という評価と実際に「どれくらい使えるかどうか」は、特に医療分野では意外と重なり合わないことも多いです(良くも悪くもですが…)。
まして費用対効果という意味におきましては、さらに厳しい視線を送らざるをえない、と思います。
極めて個人的な問題ですので、直接的なお答えができず申し訳ありませんが、お大事になさってくださいますよう……。
(回答日時:2015/08/02 18:00:14)

磁石をシールで張り付けて肩こりをとるという商品は昔からありますが、これも疑似科学もしくは似非科学ですか? (投稿者:こげぱん)

こげぱん様
ご投稿ありがとうございます。
ご質問の件ですが、今のところ全くの疑似科学とはいえない、というのが本項に関する現在の総評です。
ただ、主観的にわかるほどの劇的な効果があるかといわれると、プラシーボ効果の可能性を排除しきれていないのが現状です。

磁気ブレスレットをしていると、たしかにコリがとれるのですが、どうなんでしょう? (投稿者:swc09)

思いこみに効果(確証バイアス)かもしれません。同じ重さの磁気のないブレスレットを買って来て、誰かに中身が見えないような目隠し袋に両方を入れてもらいましょう。それらを交互に毎日装着して、どちらの日が調子がよいか調べてみましょう。

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