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回帰効果(Regression Effect)

 ある一定の能力をもった人が、その能力を活用しようと何度も挑戦したとき、成功したり失敗したりします。それは能力以外のいろいろな要素が偶然に作用した結果です。能力以上の成功を続けたときは、ある種「がいい」状態に相当しているわけですので、早晩失敗に転じます。これを平均への回帰効果といいます。スポーツ選手が大活躍した次の年は、期待ほど活躍しないものです。これは「2年目のジンクス」と呼ばれていますが、大活躍に偶然の要素が多くあったので、次の年は回帰効果で成績が落ちたと見られます。
 同様のことが、体調の変化にも見られます。体調が悪くても、ふつうは自然に回復するものです。これも通常の状態への回帰効果です。しかし、体調が悪い時にサプリメントを飲むと、サプリメントのおかげで回復したと思いこむのです。悪徳商法にだまされる原因になります。

科学(Science)

 実在を探究し、社会的に利用しようとする営み。科学的な探究は、経験によるデータ収集と理論構築の相互循環を重ねて、より良い理論を整備し、それによって将来を予測するという方法をとっています。科学の中核は、こうした探究方法にあります。
 一方で、科学の研究成果も「科学」と呼ばれますが、科学の成果は研究の進展とともに改訂がなされますので、古い研究成果に固執すると時代遅れになる恐れもあります(証明)。また、研究対象によって、物体の科学は「自然科学」、人間の科学は「人文科学」、社会の科学は「社会科学」と分野が分かれています。理科は自然科学のことで、科学の一部ですが、理科だけが科学だというわけではありません。
 なお、文学や芸術などのように、科学の方法をとらない学術研究もあるので、学術研究がすべて科学であるわけでもありません。

学術論文誌(Academic Journal)

 学会では通常、学術論文誌を発行し、該当分野の研究論文を査読のうえ掲載しています。昔は有料で販売し、学会の運営費用にあてていましたが、今ではインターネットを介して無料で電子配信する事例も増えてきました。論文の著者はなるべく多くの人に研究成果を知って欲しいので、そのほうが理想的と言えます。

確証バイアス(Confirmation Bias)

「知人にもらった幸運のお守りのおかげで、今日100円を拾いました。」

「知人にもらった幸運のお守りのおかげで、テストの点数が上がりました。」

「知人にもらった幸運のお守りのおかげで、彼女(彼氏)ができました。」……

 身近な生活の中でこのように思ったことはありませんか。確証バイアスとは、本来であれば偶然起きただけの体験の間に対し、認知の偏りから「意味づけ」を行うことをいいます。つまり、“お守りの効果を信じているので、効果があるとみなせる事例ばかりが目につき、その確信をより深める”ということが確証バイアスによって導かれるのです。お守りの効果を“信じるために、”体験を探してくる、と言い換えてもいいでしょう。
 冒頭の例でいくと、100円を拾ったのは偶然でしょうし、テストの点数が上がったのは本人の努力に他なりません。恋人ができたということに至っては、おそらくもっと様々な要因があるでしょうから、それらすべてを「お守りの効果」に帰属させてしまうのはあまりにも短絡的です。にもかかわらず、確証バイアスによってお守りの効果を確証するのに都合のよい記憶ばかりが思い出されるのです。

仮説検定(Hypothesis Test)

 たとえば、あるサプリメントがダイエットによいという仮説を検定するランダム化比較対照試験を行った場合、サプリメントを摂取した実験群に対照群よりも有意な効果があったと統計的に示す方法。通常5%を有意水準と設定して、偶然ではそれを下回る確率でしか起きそうにないとき、仮説が支持されます。
 しかし、5%というのは20分の1なので、20回以上の実験や調査を繰り返した場合、偶然で1回程度有意になってしまう難点があります。失敗実験がお蔵入りになっている(お蔵入り効果)と、疑似的な効果が容易に検出されてしまうのです。

学会(Society)

 同じ分野の学術的な探究をする人々が集まり、交流する場。通常は、投稿論文を審査・掲載する学術論文誌の発行や、議論の場となる研究会、大会、国際会議などを開催しています。学会には、さまざまな考え方や研究アプローチをもった人々が集まり、たがいに切磋琢磨しています。一般市民は、学会が権威を持っているイメージを抱いているようですが、健全な研究姿勢の持ち主ならば、原則誰でも歓迎されるオープンな場です(公共性)。

金縛り(Kanashibari)

 睡眠から目ざめても身体が動かない現象で、通俗的には地縛霊などの仕業とされていますが、生理学的な原因は解明されています。簡単にいうと、睡眠時、とくに夢見の状態では身体運動がスイッチオフになっており()、これは、夢の内容に応じて身体が動く危険を防止するための仕組みなのです。
 一方、目ざめると身体運動がスイッチオンになるわけですが、ときに、目ざめても身体運動がスイッチオンにならないこともあり、それが金縛りとして体験されます。いわば、自覚的な意識は目ざめているが、身体はまだ目ざめていない状態といえ、幽霊とは無関係です。

カルト集団(Cult)

 カリスマ性のある指導者のもとに、何らかの教義を狂信的に崇拝する人々が集まった集団。指導者の支配のもと、集団の内外で犯罪を起こし、しばしば反社会的な破壊行動に出ることもあります(終末予言)。カルト集団が新興宗教に多く見られるのは、伝統的宗教は長い間に社会に適応して制度を築いてきたのでカルトになりにくいからと言えるでしょう。なお、カルトとは「崇拝する」という意味から派生しており、オカルトとは、語源を含めて無関係です。

喫煙のリスク(Risk)

 喫煙が健康に及ぼす影響については多くの研究があります。まず、タバコには有害と判明している化学物質が200種類、その中で発がん性物質が40~60種類含まれており、これらによる人体への影響が懸念されます。また、喫煙によって一酸化炭素が体内に取り込まれるため、酸素欠乏による動脈硬化作用なども大きな危険の一つです(注1)。
 リスクという面に目を向けると、喫煙者の男性(1日20本以上)は、非喫煙者の男性に比べ、肺がんによる死亡率が4.5倍となることが分かっています。女性の喫煙については、心筋梗塞による女性の死亡率が、喫煙者が非喫煙者の4.5倍となるといわれています。さらに、受動喫煙についても深刻な影響が懸念されます。夫が喫煙者であり、妻が非喫煙者の場合、その女性は、非喫煙者の男性を夫に持つ場合より1.9倍肺がんを起こしやすくなることが示されているのです(注1)。
 喫煙については他にも、金銭的、経済的な影響(ニコチンへの依存による)や、周りの人を喫煙者にしやすくなるという副次的なリスクも抱えており、多くの医療機関などで警鐘が鳴らされています(注2)。

客観性(Objectivity)

 主観的な思い込み(確証バイアス)や直感的な断定などを排除してデータが得られていること。本評定サイトでは、二重盲検法を用いたランダム化比較対照試験などによって統計的な分析が行われている場合に、客観性が高いと評定しています。

機能性表示食品

 生産者が、含有成分の機能性(効果)と安全性を示す情報を消費者庁に届け出て、一定の要件を満たして書類が受理された健康食品。機能性表示食品として受理された食品は、その届出番号とともに、受理された機能性をパッケージや広告に表示することが認められています。保健機能食品のひとつに相当します。
 ただし、トクホと違って消費者庁が審査をしたわけではないので、あくまで生産する企業の側の責任で表示していることに、消費者は注意が必要です。企業が届け出た書類は消費者庁のホームページで閲覧できるので、消費者自身がその情報の信頼性を評価すべきです。
 機能性の届出には、その含有成分について、ヒトでのランダム化比較対照実験で肯定的なデータを得た研究がひとつ以上あることが必要ですが、機能性表示食品の中には、多くの実験で確実な効果が示されているものから、少数の実験しかなくて効果が不明瞭なものまでが含まれています。少数の実験での肯定的なデータは、お蔵入り効果多重検定による疑似的効果である疑いが濃厚です。

境界設定問題(Demarcation Problem)

 境界設定問題とは、科学哲学分野でよく知られている概念で、平易にいうと、科学と疑似科学の間にどのように「線を引く」か(どこからが科学で、どこからが疑似科学なのか)ということについての問題を指します。「線引き問題」などとも呼称されます。この問題は科学史や科学哲学の分野で盛んに議論されてきましたが、現在までのところ、明確な解答は得られておらず、むしろ「画一した線を引くのは難しい」との見解に至っています。
 一例ですが、頭の禿げあがった人を判別する方法を考えてみるとわかりやすいでしょう(エウブリデスのパラドックス)。髪の毛が何本以上生えていたら「禿げじゃなく」、何本以下だったら「禿げである」という明確な基準が、果たしてあるのでしょうか。また、我々はそうした明確な基準を基に判断しているのでしょうか。
 「科学」と「疑似科学」の間も同様で、たとえば、科学である要件として「○○回以上の実験で成功した」や「○○人以上の被験者が必要である」といった基準を設けても、それらの数字は分野によって異なるでしょう。一つの考え方としてカール・ポパーの「反証可能性」が提示されてはいますが、これだけで厳密に線を引けるとも多くの科学者は考えていません。
 要するに、多くの「科学」は非常に複雑なさまざまな要素を備えており、科学と疑似科学の間には、どちらともいえない膨大なグレーゾーンが広がっているのです。「科学」か「疑似科学」かは画一的な見方ではなく、多面的な評価によって判別されるもの(実際にそうされてきた)であるといえるでしょう。

恐怖(Fear)

 恐怖は、多くの動物が危険を回避するために身につけている感情です。何に恐怖を感じるかには生得的な制約があり、暗い所、高い所、大きい物、ヘビなど(危険な動物)が典型です。反対に、明るい所、低い所、小さい物、ウサギなど(安全な動物)に恐怖を抱くように条件づけることはきわめて難しいとされています。
 恐怖の対象には本来、命にかかわる危険性が内在しているので、暗い所などに恐怖を感じる心理機構が選択的に生物進化してきたと考えられています。危険な状況では、逃げる、戦う、隠れるなどの防衛行動をすばやく行なわねばならず、そのため、少しでも危険が予測される状況では恐怖がいち早く過剰に発動されるのです。幽霊への過剰な恐怖もこの防衛行動の名残りと考えられるでしょう(トップダウン認知)。

クオリア(Qualia)

 先週食べた豪華な食事を思い出してそれで満足する、といったことは体験できるでしょうか。過去の経験を想起した想像世界にはクオリアというありありとした現実感が欠けています。逆に現実の知覚世界にはクオリアがあり、つまり私たちは、クオリアによって知覚世界を内的な想像世界から識別していると考えられます。
 ありありとした現実感が伴う想像世界は魅力的ですが、それに埋没すると現実の生活がままならなくなってしまうのです。

公共性(Public Openness)

 科学の営みは、社会的にオープンになっていることで成立しています。その点で、オカルトとは対照的です。本評定サイトでは、理論データの評価が、学会などの開かれた団体によって吟味されている場合に、公共性が高いと評定しています。

抗酸化物質

 生体、食品あるいはそれら以外の様々な物質に酸素が関与する有害な作用を抑制する物質の総称です。抗酸化剤やアンチオキシダントとも呼ばれています。生体あるいは食品において、広義には活性酸素種を捕捉する物質を、また、狭義には脂質の過酸化反応を抑える物質を抗酸化物質といいます。
 大気中の酸素は三重項状態で他の分子とは反応しにくいものですが、不対電子をもつ分子種(ラジカルといい不安定な分子で反応性が高い)と反応してラジカル連鎖反応を起こしやすくなります。とくに、不対電子を有している鉄や銅などの遷移金属によって反応性が高められることがよく知られています。
 酸素が還元されて水になる途中で生成するスーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルと光照射によって励起状態になった反応性の高い一重項の酸素分子を併せて活性酸素種といいます。これらの活性酸素種生成を高める因子として喫煙、飲酒、放射線、紫外線、排気ガスなどあります。すなわち、身の回りには活性酸素種の生成を高めるものがたくさんあるのです。

酵素(Enzyme)

 ある特定の化学反応を促進する物質を酵素と言います。たとえば、胃液に含まれるペプシンは、タンパク質を分解する反応を促進します。発酵も、微生物が持っている酵素によって有機物質の分解を促進し、有益な物質を産出させる方法で、お酒や味噌などの食品生産に使用されています。一部の酵素(たとえばジアスターゼなど)は、摂取することで消化を助ける効果が知られています。
 酵素は非常にたくさんの種類があり、体に良いか悪いかはわかっていないものも多くあります。どんな化学反応を促進して何が産出するかによって、酵素の機能は決定的に違います。健康食品に「酵素」と名前が付いているものがありますが、少なくともどんな化学反応を促進して何を産出する酵素なのかが明示されなければ、酵素が体に良いかどうかは判定のしようがありません。酵素だから体に良いと安直に考えてはいけないということです。

コールド・リーディング(Cold Reading)

 占い師や霊媒師(Psychic)が来談者の過去や将来を読み解いた口述は、一般にリーディング(Reading)と呼ばれます。そのうち、超常的な能力による口述をサイキック・リーディング(Psychic Reading)と呼ぶ一方、来談者とのコミュニケーションを通してあたかも超常的能力を発揮しているかのような印象を植えつける口述を、コールド・リーディング(Cold Reading)と呼びます。コールド・リーディングを行うにあたってはさまざまな手法が開発されており、いわゆる占い師の指南書にあたる本に掲載されていますが、来談者の一部が事前にわかっている場合、その人に関する身元調査を行ったうえ口述するホット・リーディング(Hot Reading)もよく知られています。

コクラン共同計画(Cochrane Collaboration)

 コクラン共同計画(http://cochrane.umin.ac.jp/publication/cc_leaflet.htm)とは、EBM(根拠にもとづく医療)におけるシステマティック・レビューを作成する国際プロジェクトです。現在、医療の分野で信頼できるシステマティック・レビューを提供している機関の一つです。コクラン共同計画は、EBMの祖の一人とされるアーチボルド・コクラン(Archiebald L. Cochrane)の名を冠にしたもので、現在のEBMにおいて重要な要素の一つとされるRCT(ランダム化比較対照試験)を中心として医療分野の研究について調査しています。
 コクラン共同計画ではまた、補完代替医療の調査にも力点が置かれており、鍼灸やカイロプラクティックにかんするレビューも参照することができます。

こっくりさん(Oui-Ja Board)

 YES・NOと五十音を書いた紙の上に5円玉を置き、その上に会席者3人の人差し指を載せて、幽霊と会話するとされる遊びのことです。「こっくりさん、こっくりさん、お出ましください」などと唱えると、幽霊が呼び出されて5円玉が動き出し、その幽霊の会話が1文字1文字、5円玉の止まる場所でつむぎ出されます。
 しかし、これがうまくいくのは会席者3人の中にこの遊びを成功に導きたいと願う人がいるときだけです。その人が5円玉を無意識に動かしているためであって(ダウジング)、したがって、5円玉が動くことや会話が成り立つことも不思議ではありません。その会話が会席者の誰もが知りえない内容であれば驚きなのですが、コールド・リーディングを使えば、そうした会話を行うのもさほど難しくはありません。