ま行

明晰夢(Lucid Dream)

 の中で、自分は夢を見ているという自覚がある夢を明晰夢といいます。
 明晰夢の達人は、夢見状態の脳波にありながら、事前にとり決めた眼球運動のパターンによって、自分はいま夢を見ているという自覚があることを実験者に伝えられるため、実証的な研究ができます。また、達人は自分の意志で夢の内容を変えられるとも報告されています。
 明晰夢が現実と同様のありありさ(クオリア)をもつと、夢の中に退行して、現実生活がままならなくなる恐れもあり、金縛り幽体離脱も明晰夢の一種ではないかという指摘もあります。

メタ分析(Meta-Analysis)

 人間や社会に関する現象は複雑なので、「ある条件が重なったときのみに効果が出るが、その条件は何かわからない」という状況で、実験や調査を繰り返す研究が多いのです。そのため、同じテーマの実験や調査をしているつもりでも、時と場合によって、また研究者によって、効果が得られたり得られなかったりすることがあります。それらの研究報告をまとめて、研究全体の分析をすることをメタ分析と呼びます。数ある研究を詳細に検討することで、効果が出る条件を特定するとか、お蔵入りデータの存在を検出(お蔵入り効果)することが可能です。

メンタリズム(Mentalism)

 メンタリズム(Mentalism)とは、予知やテレパシー、交霊などの精神的(mental)な不思議現象をひきおこすテクニックのことで、占い師や霊能者の用いる手法に起源があります。しかし、今日の奇術界ではメンタルマジックの別称となっています。松田道弘『メンタルマジック事典』(東京堂出版、1997年)のメンタルマジックの項目には、「奇術の分野のひとつ。サイキック・フォースを使用したとみせかけながら実はトリックを用いて観客を不思議がらせるショウ。メンタリズムとほぼ同義」(86ページ)と書かれています。ここでいうサイキック・フォースとは超能力のことですから、メンタルマジックやメンタリズムは「超能力マジック」とも言いかえられるでしょう。
 つまり、テレビ番組で放映されるメンタリズムの現象は、奇術の演出にすぎません。「人間の心を読む」といっても、透視のような超能力でも、何らかの心理技法でもありません。一般に表情を読むことで、人間の感情変化を多少知ることができますが、それ以上に確実な「心を読む技法」は開発されてはいません。メンタリズムが本当の超能力であるとか、百発百中の心理技法であるとかの誤解が一部にあるようですが、テレビ局などのメディアが視聴者をまどわした結果なのです。

目撃証言(Eyewitness Report)

 私たち人間は、自分の記憶は過去の経験の想起であると単純に判断しがちですが、そうではないことが明らかになっています。
 認知心理学の実験研究では、経験していないことをあたかも経験したかのように記憶に植えつけることに成功しており、そのため、犯罪の取調べにおける犯行の自白(誘導尋問などによって犯していない犯罪の記憶がつくられる)による、えん罪被害の可能性も指摘されています。超常現象の目撃でも、周囲の人々が「UFOが飛んでいる」と語った内容を聞いた人が、後から自分も目撃したかのような記憶を作りあげている可能性が強く指摘できます。

モデル(Model)

 科学的探究の中で、研究対象の構造や働きを簡単に図式化した説明。複雑な研究対象をあえて、その一側面だけを取り出して記述したもので、理論の一形態とも言えます。

や行

幽体離脱(Out-of-Body Experience)

 肉体から意識だけが抜け出して宙に浮き、上から自分の身体を見おろすような体験のことで、金縛りに伴って体験されることが多く、かつては自分の魂が抜け出して幽霊になった状態と解釈されていました。今では、生理学的に明瞭な説明がされており、体脱体験と呼ばれています。
 日常の意識状態において、多くの人は身体の位置に意識があると感じています。しかしそれは、そう感じた方が便利だからそうなっているにすぎず(身体が視覚や聴覚の拠点のため)、最近の仮想現実の技術を使えば身体を離れた位置に意識を感じさせることもできます。 自分の身体を上から見おろすような体験をすることについては、夢で見た内容の誤認と判断できます。その点で、明晰夢の精神状態と類似しているとも考えられており、金縛り状態や、怪我で身体が動かない場合に、とくに身体の外に意識を位置づける傾向が高くなるのもうなずけます。

夢(Dream)

 夢には「希望」や「理想」のような比喩的な意味もありますが、ここでは文字通り「眠っているときに体験する世界」について解説します。
 夢は、睡眠時におよそ90分周期に現れる覚醒時に近い脳波の状態で体験され、このとき脳の身体運動機能はオフになっています(金縛り)。夢は現実の知覚世界に近い体験世界ですが、外部からの感覚情報はあまり受容できない睡眠状態の体験でもあるので、その世界を構成する情報のほとんどは記憶から想起されていると考えられます。夢の役割には諸説ありますが、一つには、記憶の整理や将来の行為の練習を担っているといえるでしょう。

予測性(Predictability)

 理論によって将来得られるデータが予測できていること。本評定サイトでは、まず、データを予測できるような具体的な理論になっている場合、つぎに、予測したデータが得られている場合に、予測性が高いと評定しています。また、予測したデータが得られていない研究があるのに、無視されていたり、実験の失敗などで片づけられていたりする(お蔵入り効果)と、予測性は低いと評定します(反証可能性)。

予防医学(Preventive Medicine)

 予防医学とは「病気になったら治す」という医学に対して、病気を未然に防ぐという発想のもと「病気になりにくい身体を作る」ことを目指した医学の考え方です。食生活や生活習慣の改善、予防接種、健康教育などもこれに含み、特にQOL(quality of life=生活の質)に配慮しています。
 2008年4月より、「特定健康診査(いわゆるメタボ健診)・特定保健指導」がスタートしました。これは、近年増加傾向にある生活習慣病への予防に重点が置かれた制度です。厚生労働省主導で実施されているこの政策(http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/09/02.html)は、生活習慣病予備軍が生活習慣を見直す手段、ひいては国の財政を圧迫し続ける医療費の削減を目指しています。

予防接種の有効率

 インフルエンザワクチンを打ったのに、インフルエンザに罹ってしまった。――こういう経験をしたことはありませんか?また、それによってワクチンは「効かない」と思ったことはありませんか? 予防接種やワクチンについての根強い誤解の一つに「有効率」の問題があります。
 ワクチン接種において「有効率70%」といった場合、「ワクチンを打たずに発病した人のうち、70%はワクチンを打っていれば発病が避けられた」という意味となります。しかし、「100人のワクチン接種者のうち、70人が発病しない」という意味に誤解されることが非常に多く、冒頭で述べた例も、こういった思い込みに起因しているといえるでしょう。有効率とは「全ての人」における数字を表すものではなく、「発病した人」の中を表すものなのです。
 たとえば、ワクチン接種を受けていない100人の生徒がおり、内10人がインフルエンザに罹患したとします。有効率70%とは、“もしも全員がワクチン接種を受けていたら”その10人のうち7人は発病せず、3人が発病するということになるのです。計算としては、ワクチン接種をすれば97人が発病せず、反対に、接種しなければ90人が発病しません。

ら行

無作為化比較対照試験(ランダム化比較対照試験):RCT(Randomized Control Test)

 比較対照試験のうち、実験参加者などを、実験群と対照群にくじ引きで無作為(ランダム)に割りつけて行う試験。人間や社会などの複雑な現象を究明するにあたっては、現象に影響するすべての条件を明確にして、実験群と対照群で同一条件にするのはかなり難しい作業です。そのため、同一にできていない条件については、統計的にキャンセルされるよう無作為化を導入します。たとえば、薬の試験では、その薬を飲んだら回復するが飲まなかったら回復しない人が試験に適当なのです。
 ところが実際には、何らかの理由で薬を飲まなくても回復する人、飲んでも回復しない人がおり、そうした人々が、実験群や対照群の一方に集中していると、結果のデータがゆがんでしまいます。そこで、大勢の実験参加者を無作為に2群に割りつけることで、隠れた条件の影響をとり除きます。

量子論(Quantum Theory)

 20世紀初頭に、物質を構成する最小物質である光や電子などについて研究が進んだ段階で判明した物理理論。それまでの物理学と根本的に異なる世界観を提示したので、量子論以前の物理学を古典物理学、量子論を含めた物理学を現代物理学と呼びます。量子論は物理実験の結果を正確に予測することができ(予測性)、レーザー発光装置などに理論が応用されている(応用性)今日、量子論は信頼のおける理論として定評を確立しています。しかし、量子論が描写する実在の解釈は理解が難しく、今でも議論が続いています。だからといって、心の働きなどと結びつける議論が容易に展開できるわけではなく、一部に流行している量子波動(波動)などは、疑似科学に位置づけられます。

理論(Theory)

 現象や体験が起きることの説明。あるいは、より科学的には、収集されたデータの背後にある規則や仕組みの説明で、将来収集されるデータの予測(予測性)に使えるものです。理論には、単なる提案にすぎない仮説の段階のものから、将来の予測に使える確実なものまでが混在しています。また、単純で確実な関係を説明したものをとくに法則、複雑な関係をあえて簡単に図式化した説明をとくにモデルと呼んでいます。根拠薄弱な理論を語る疑似科学が多い(引き寄せの法則など)ので、注意が必要です。説明に納得ができても、将来の予測に使える見込みのないものは、科学として価値がありません。

理論負荷性(Theory-Ladenness)

 理論負荷性とは、科学哲学における概念のひとつです。哲学者のハンソンによって提起されました。観察は、理論と無関係に行なわれるのではなく、理論をとおして観察が行なわれるという考え方です。
 一見すると観察とは、理論に先立って行われ、理論の影響を受けないものと思われます。直観的には、ありのままに世界を捉えるものが観察であると思いがちです。しかし、観察とは背景となる知識によって形作られ、知識を背負うものなのです。
 たとえば、下の図1を見たとき、ふつう「後ろを向いている若い女性」に見えるはずです。しかし、この図のカラクリを知っている人に「高齢の女性の横顔が見えてくる」と教えられ、しばらく見ていると「老女の横顔」が浮かび上がってきます。
 このように、観察は理論から切り離すことができず、理論によって影響されます。そしてこれは、ヒトが概念を形作る方法でもあるのです。

女と老女

※Edwin Garrigues Boring作

臨死体験(Near-Death Experience)

 怪我や病気で瀕死の状態になったときに、光のトンネルを抜け、自分の人生をふり返り、花畑のような世界に行き、死んだ祖先と再会し、川のような境界に行きあたり、後ろ髪を引かれるような感じがして目ざめるという一連の体験(あるいはその一部)をすることがあります。これを臨死体験といい、幽体離脱の体験に引き続いて起きることもあります。
 特定の文化や宗教にかかわらず体験が報告されているので、脳が機能を停止しかけた(あるいはそこから快復に向かう)ときに起きる生理学的な現象と推測されています。脳が生理学的に完全停止したときに体験が起きたと主張されることもありますが、覚醒に向かうわずかな時間で体験された可能性もあります(これは夢と同様の特性である)。霊界の存在証明としてしばしばこの体験が注目されますが、霊界の存在証明にはなりません。

歴史性(Research History)

 その事象が時間的な変遷において濃密である程度。科学の営みは、理論データの評価が重ねられることで進展しています。歴史上、そうした議論が多くなされていれば、より良い理論である可能性が高いのです。本評定サイトでは、学会などの開かれた場や学術論文によって、科学的な議論がどの程度行われてきたかで、歴史性の度合いを評定しています。

論理性(Logical Consistency)

 推論の過程に論理的な飛躍がなく、かつ矛盾がないこと。論理学では、前提が正しいならば、結論も正しいとされるほどの確実な推論過程(証明)にかぎって、論理的と言う向きもあります。本評定サイトでは、理論の説明に含まれている推論がどれほど論理的であるかの程度や、推論の前提がいかに合理的な根拠にもとづいているかを、論理性の度合いと捉えています。