さ行

再現性(Repeatability)

 実験や観察、調査を反復したときに、前回と同様のデータが得られること。本評定サイトでは、多くの異なる研究者によって再三同様のデータが確認されている場合に、再現性が高いと評定しています。またそれが、システマティク・レヴューメタ分析によって明らかになっていると理想的です。

催眠暗示(Hypnotic Suggestion)

 人間の行動の多くの部分は無意識ですが(代表的なのは、歩行時の足の運びである)、しかし、要所要所では意識的な意志決定がなされています。その意思決定が他者の意志教示によってなされる精神状態を催眠状態(変性意識状態)といい、そのときの言語教示を催眠暗示といいます。
 人によっては自分で意志決定をするよりも他者にゆだねることを好む人もいます。そうした人は催眠暗示に従いやすく(被暗示性が高い)、催眠にかかる人のほとんどは、この種の人たちです。催眠暗示を上手く使えば、自分の行動をうまくコントロールできないときに、それを打開するひとつの手段ともなるでしょう。

サプリメント(Supplement)

 健康食品の一部で、錠剤などの薬の形態をしたものを、とくにサプリメント(補助食品)と呼んでいます。薬のように見えますが、食品です。本来は食事で摂取できなかった栄養素を補う用途に使われる、いわゆるビタミン剤などの栄養機能食品の呼称でしたが、拡大して使われています。
 医薬品に関する法律によって、食品は効果・効能をうたうことができないとされていますが、愛用者の感想などの手法を使って、あたかも効果があるかのように印象づけるサプリメント広告が横行しています。微量の毒成分が入っている食品は多いので、抽出した食品成分をサプリメントの形で大量にかつ長期的に摂取すると、安全性の面でも不安があります。

サブリミナル効果(Subliminal Effect)

 自覚できないほどの弱い刺激が与えられたときに、意識ではその刺激を経験した記憶がないにもかかわらず、無意識にはその記憶があり、その後の行動がその刺激に応じた形に変化することをサブリミナル効果といいます。例をあげれば、風景映像の中に十数ミリ秒の短いケーキ画像をしのばせておくと、その風景映像をみた人の中に「ケーキが食べたくなる人」が現れるといった現象のことです。
 この効果によって、映画を見た人々の消費行動をひそかにコントロールできると大騒ぎになりましたが、「ケーキが食べたくなる人」はそもそもケーキが好きな人であり、人々の行動を変えるほどの強い効果ではありません。無意識の単純接触効果程度と考えるのが妥当であり、つまり、サブリミナル効果は一部の人に小さな効果があるに過ぎないので、それを社会で利用できるという主張については疑似科学の疑いが濃いでしょう。

色彩治療

 色彩治療とは、文字通り「色によって病気が治る」とする主張です。広義には、「色彩心理学」と関連した言説とみなすことができますが、こちらは特に病気への有効性という点に焦点が当てられています。「心の癒し」などがキーワードになっていますが、身体疾患について言及している言説もあります。ほかに、カラーセラピーなどと呼ばれることもあります。

視線検知(Gaze Detection)

 他者がどこを見ているかを判定する能力で、人間の場合では乳幼児の時期から確立すると言われています。動物界において広く進化した能力であり、これは、いち早く危険を察知するためです。
 人間のような協力集団を結成する動物では、さらに他者の意図を読むことが必要となったため、とりわけ視線検知の必要性が高まっています。その結果、他者の目から光が出ていることが感じられるように主張されることもありますが(波動)、無意識のうちに行なわれる視線検知の処理が、「視線」という光の筋のような印象で意識にのぼっているだけであると考えられます(知覚世界)。

自己成就予言(Self-Fulfilling Prophecy)

 占いで自分の将来に関する理想的な姿を口述されると、知らず知らずのうちに、その予言の実現に向けて努力をしてしまう傾向が人間にはあります。この傾向によって、予言が当たったかのような認識が生まれる現象を指します(コールド・リーディング)。

システマティック・レビュー(Systematic Review)

 システマティック・レビューとは、ある問題にたいし、これまで発表されている研究報告や情報を網羅的に調査し、さまざまなバイアス(思い込みや偏り)を排除しながら分析を行うことをいいます。RCT(ランダム化比較対照試験)のような質の高い研究データをまとめ、批判的に吟味します。また、その問題に関する全ての研究を網羅的に扱うことで、質の高い情報を提供し、他の人が同一の問題で調査する手間も大幅に省くことができます。
 現在、特に医療分野でシステマティック・レビューは重宝されています。「この治療法には本当に効果があるのか?」といった質問に対し、広い意味での結論を与えてくれるからです。補完代替医療の分野だと、鍼灸やカイロプラクティクのシステマティック・レビューは「コクラン共同計画」などから発表されています。

自然治癒力(Spontaneous Cure)

 近ごろ、この言葉がもっともよく話されているのは、いわゆるニセ医学の界隈においてではないでしょうか。自然治癒力とはヒトも含めた生物全般が例外なく備えている普遍的な能力ですが、ニセ医学の多くはこの自然治癒力を「(通常医学よりも)大事にする」や「向上させる」といったことを謳い文句にして、患者を集めています。
 「切られたトカゲのしっぽがまた生えてくる」ことに代表されるように、生物の身体は自らで自らを治癒します。ヒトにおいても同様で、風邪や切り傷などの治る過程がその典型でしょう。そして当然ながら、身体の状態によって自然治癒力の働き方も異なるのです(ある病気において喫煙者と非喫煙者では治癒するスピードが違うなど)。
 しかし、いわゆるニセ医学の現場では、この自然治癒力を拡大解釈した場面が目立ちます。ニセ医学による通常医学への批判などもその典型です。
 よく聞かれる誤解の一つに、「通常医学は自然治癒力を軽視している」といったものがあります。しかし、風邪や切り傷をはじめ、通常医学も自然治癒力に頼っています。また、3分の1以上残っていたら「再生する」というヒトの肝臓の特徴を利用して生体肝移植が行われたりと、むしろ自然治癒力を効果的に利用しているとさえいえるのです。
 「自然治癒力を○○する!!」などといった文言をみかけたら、一度足を止めてみる必要があるでしょう。

終末予言(End Prophecy)

 いついつに世界は終末をむかえるとか、人類は滅亡するとかの予言。ほとんど毎年のように、世界中のどこかの団体が「今年が終末である」という趣旨の主張をして危機感をあおっています。では、実際にその年に何も起きなかったら、主張していた団体はどうなるでしょうか。
 「私たちの祈りが功を奏して終末が回避できた。次は〇〇年が危い」などの後づけの説明をして、団体は行き残ります。信じていた人々も、自分たちの誤りを認めたくない(認知的不協和)ので、その説明を信じてしまいます。団体の中には自分たちで終末を自作自演する例(自己成就予言)もあり、非常に危険です(カルト集団)。

実在(Reality)

 実際に存在すること。哲学の分野では歴史的に多くの議論が重ねられてきましたが、科学では、科学的研究方法によって探究できることをもって、研究対象の実在を想定します。科学的探究によって理論が構築でき、それによって将来が理論通り予測できるのならば、その研究対象は現に存在すると言ってよいでしょう。
 逆に、科学的に探究できないものは、実在していないとも見なします。たとえば、霊界については伝聞的な報告しかありません。たとえ霊界があったとしても、人類とかかわりあいがなければ、それはなきに等しいと考えるのです。

証明(Proof)

 数学で与えられた前提から論理的な手順で結論を導くこと(論理性)を、証明と言います。前提がすべて正しいとき結論も正しいことが、論理的に保証されます。数学は、科学的探究のための道具のひとつであり、ときに適切なモデルを与えてくれます。しかし、科学そのものではありません。科学では前提がすべて正しいと保証されることはないので、結論の正しさも保証されません。だから、科学では、証明できることはなく、理論の確実度が上がっていくだけなのです。
 日常語において、「証明」をもうすこし気軽な意味で使う傾向もありますが、誤解のもとにもなってしまいます。

ジンクス(Jinx)

 幸運()が起きたときに、たまたま身につけていた赤い靴下やブレスレット、あるいはたまたま直前に行っていた行動が、その幸運の原因と思いこむ現象です(回帰効果)。実際的な効果はないので、身につけていなくても大丈夫だという経験をすれば、ジンクスは破られます。
 ところが、思い込むとそれらを身につけていないと、あるいはその行動をしないと何ごとにも挑戦できなくなります。スポーツ選手や芸能人のように、確かめるための失敗が許されない状況が多いと、ジンクスにはまりやすいといえます。ただし、ジンクスには「従えば大丈夫」という暗示(催眠暗示)による安心効果もありますので、悪徳商法にだまされないように、うまく考えていけるとよいでしょう。

信頼性(Reliability)

 物体の性能が期待通りに安定していること、あるいは人間が期待通りに誠実な対応をしてくれること。日常語では、後者の「信用」の意味で使われることが多いですが、心理学での「信頼性」は、データの挙動が安定していることで、前者の意味です。本評定サイトでは、心理学での「信頼性」は再現性として評定しています。そして、「信頼性」については、日常語の意味で使用しています。

スランプ(Slump)

 もともとは、スポーツ選手がフォームを崩して長く成績が低迷することでしたが、それから転じて、不運が続くことをスランプと呼ぶ傾向が出てきました。不運は偶然に悪いことが集中することです()ので、原因はなく、いずれ回復します。それを「フォームが崩れた」と思って修正にかけると、”かえって”フォームが崩れてしまい、長いスランプになることがあります。フォームの崩れがあるのかどうか、それを見抜く優秀なコーチが必要ですね。

生命エネルギー(Life Energy)

 人間などの生命体が「生きている」状態において、その根源となるエネルギーとされるもので、生命思想のひとつです。活力のある状態を「生命エネルギーに満ちている」などと比喩的に表現したりします。
 ただし、物理学で使用しているエネルギーの概念とは無関係であるうえ、生命エネルギー自体を測定する手法も確立されていません。また、特定の神聖なる場所をパワー・スポットなどとして、生命エネルギーが充填される場所と比喩的表現を超えて宣伝されたり、あるいは貴重な石をパワー・ストーンと称して、生命エネルギーが良好化される物とみなされたりしますが、いずれも風聞のたぐいといえるでしょう。

説明責任(立証責任)(Accountability)

 科学という営みにおいて、何らかの仮説を主張したい場合、それを説明する「責任」は主張する側に生じます。これを、「説明責任」や「立証責任」「証明責任」などと呼びます。
 科学では仮説を主張する側にすべての責任が帰属され、それ以外の立場においては、その説明が有効かどうかを評価します。有効な説明になっていないと思っても、「仮説が誤っている」と示す「責任」は生じません。そもそも多くの「誤っている仮説」は、細部の定義が不明確であったり、奇妙な前提条件が導入されていたりと、正しいことはおろか誤っていることも立証しようがないのです。
 仮説を主張する側は、十全な理論、妥当なデータなどをもって立証を試みます。多くの場合、「学会」がその発表の場として機能しており、そこでの承認と他の研究者による追試などを経て、はじめて社会に受け入れられることとなります。
 科学という営みでは「何回以上の追試で認められるのか」や「何人以上が承認すれば認められるのか」といった区分は実際上意味をなさないため、「研究者らによる概ねの総意が得られたもの」が正当な理論として扱われることとなります。仮説⇔検証というサイクルの繰り返しによって科学は成立しているため、常に新しい理論が生まれては消えているのです。

前世療法(Post-Life Therapy)

 来談者を催眠状態(催眠暗示)に誘導したうえで、想像を語らせることによって、「前世」とされる物語を作成し、それにて心理的な問題を解消しようとする心理療法のことです。「自分の前世は勇者である」などといった認識によって自信がつくことはあり得ることで、物語による心理効果として知られています。ですが、結局それは「物語による効果」なのであって、仮に前世療法がうまくいったからといって、前世や霊界があることの証しにはなりません。

想像世界(Imaginational World)

 今いるここは直接体験できる知覚世界です。しかし私たちは、直接体験できない隣の部屋の状況も、想像世界として思い浮かべることができます。このような想像力は、人間に特有の能力であり、文明を発展させてきた原動力でもあります。
 チンパンジーなどの他の動物には人間ほどの想像力は備わっておらず、むしろ現実の知覚能力の方が高いとみられていますが、人間は想像力によって隣の部屋だけでなく、地球の裏側の人々の生活や、過去の経験、未来の自分に起きることも予想できます。
 想像力が強過ぎると、存在しない幽霊を怖がったり、ありそうもない将来に過度に不安を抱いたりするという問題も発生します。そのため、想像世界と知覚世界を混同しないようにクオリアが働いていると考えられます。