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ゲルマニウム

言説の一般的概念や通念の説明

語句説明

 本項目では、ゲルマニウムの経口摂取による人体の健康促進と、ゲルマニウムブレスレットなど外用製品による健康有効性の言説について言及する。本項では全編にわたって浅井一彦氏を起源としたアサイゲルマニウムに関連する言説を中心に扱い、データ面での評定は特にこれについての言及である。
 当然ながら、トランジスタなどに用いられている、原子番号32である半導体としてのゲルマニウムの電気物性的有効性については本項目の評価対象ではない。

効果の作用機序を説明する理論の観点

理論の論理性 (低)

 浅井氏らによるゲルマニウム言説では、「有機ゲルマニウムが体内の酸素循環の活性化に寄与し、それによって生命活動が活発になり万病を癒す」という理論がある。しかし、ゲルマニウムを摂取することによって体内の酸素循環が活性化されるという研究報告はなく、独自に構築された推論に過ぎない。他にも万病予防、治療となるとの主張がみられるが、物語的意味の比重が大きい(たとえば、漢医学で癌などの重病に効くとされるサルノコシカケや朝鮮人参の成分にゲルマニウムが多量に存在する、といったことなどから言説が構築されている)(1)。
 また、経口摂取により体内のインターフェロンが活性化され、人体の免疫力が高まるといった主張もみられる(8)(9)が、その理論も「ルルドの泉」などを根拠としており、伝説や物語からの転用に過ぎない(1)(2)(3)。確かに、ゲルマニウム製品の中で唯一医薬品認定を受けているプロパゲルマニウム(B型慢性肝炎治療薬)にはこのインターフェロンを誘発する作用があるが、インターフェロンが肝炎ウイルスに一定の抵抗力があることはわかっているものの、それが万病に効くという証左はない(4)。
 そういうわけで、少なくとも経口摂取によるゲルマニウムの万病有効性については、論理の著しい飛躍がある。
 ゲルマニウムブレスレットなどの外用ゲルマニウム製品についても同様の評価ができる。製品によって「マイナスイオン」健康効果があるといったものや、発汗作用による「デトックス」排出効果、ゲルマニウムを身につけることによる「有害電磁波」の遮断といったように特定の論理を構築しているものではない(5)。このような言説を論理性の根拠として用いても、外用ゲルマニウム製品の論理の補強には全く寄与しない。
 以上から、経口摂取、外用品ともにゲルマニウム製品の論理性は低いと評価する。

理論の体系性 (低)

 プロパゲルマニウムを含めた経口摂取によるゲルマニウム健康説で用いられている用語(1)(2)(3)(8)(9)――酸素循環やサイトカイン(インターフェロン)という概念自体は完全に誤りとまでは言えない。つまり、プロパゲルマニウムを盾に「有機ゲルマニウムは免疫系に作用する」という効果だけならば文脈上一応読み取ることも可能ではある。しかし、多くのゲルマニウム言説ではそれ以上の万能性を謳っており(2)(3)、そうした万能性を担保するための合理的な説明がゲルマニウム言説側からされている様子はない。
 これは外用品の効果の説明においても同様で、言説の根拠として「マイナスイオン」「デトックス」「電磁波有害説」といった現代の学術的知見と整合的でない概念が用いられている。

理論の普遍性 (低)

 仮に、ゲルマニウム言説を広い意味で受け入れたとしても、たとえばプロパゲルマニウムは慢性B型肝炎における治療薬であり、原則他の病気に用いることはない。よって特定疾患における有効性という意味で普遍性は低いといえる(※補足すると、慢性B型肝炎という病気は臨床現場でも稀なものに位置しており、少なくとも医学教科書レベルでは一般的な病気として認識されていない。また、現在ではB型肝炎について一生抗体の残るワクチンが開発されており、プロパゲルマニウム治療薬を臨床現場で用いること自体、稀有な状況といえる)。
 万能効果を主張するゲルマニウム言説では、主張している立場からすると広く普遍的だとしているが、しかしそれを裏付ける再現性、客観性を伴ったデータは報告されていないため、普遍性を論じる以前の問題といえる。
 外用ゲルマニウム製品についても同様で、有効性を特定しておらず広く普遍的だとしているが、それを裏付ける研究は行われていない。健康効果については個人の感想、愛用者の評価でしか提示されておらず、実証的な説明が与えられてはいない。

実証的効果を示すデータの観点

データの再現性 (低)

 浅井氏を起源とするゲルマニウム言説では、酸素循環を促進させることで人体機能が活性化し、あらゆる病的症状が改善すると主張している(1)。しかしこの言説を検証しようとしても、現代の実証研究の方法論ではとらえきれず、それに替わる研究方法も確立できない。つまり、反証不可能な万能理論と化していることが見受けられる。また、酸素循環の活性化のみでは説明のつかない疾患に対しても有効性があるとの主張も見られるが、その再現性には疑問がもたれる。
 他に、ゲルマニウムブレスレットをはじめ、外用品としてもゲルマニウムの健康有効性が主張されているが、その効果についても量的データなどによって再現性は示されていない。
 効果とされるものの根拠は愛用者の感想など逸話的な積み重ねに終始しており、それらも質的データとして厳密に研究されたものではなく、これでは単なる“物語”としてでしか評価できない。データの再現性は低い。

データの客観性 (低)

 プロパゲルマニウムについては、第三者機関などによる対照実験、また効果対象の特定化がなされている認可医薬品なので、客観性は高いと評定できるが、疑似科学として問題となっているものに該当しないので、除外して考察する。
 少なくとも、アサイゲルマニウムが源にあるゲルマニウム言説では、客観性の高いデータが集められているとは言えない。
 効果を支えているデータが「愛用者の感想」や簡易的なアンケートであるため、肯定側の主張を消費者に流し込みやすい構図となっている。
 以上より、客観性は低いと評価する。

データと理論の双方からの観点

データ収集の理論的妥当性 (低)

 慢性B型肝炎治療薬としてのプロパゲルマニウムについては、医薬品の認可を受けているものの特定疾患に向けた限定的使用にとどまるので、以下の評価からは除外して考える。
 アサイゲルマニウムを起源としたゲルマニウム言説では、理論、データの両面において疑問がもたれる上、そうした疑問や批判を回避できる研究がおこなわれているとはいえない。

理論によるデータ予測性 (低)

 妥当性の項目と同様に、慢性B型肝炎治療薬としてのプロパゲルマニウムについては、医薬品の認可を受けているものの特定疾患に向けた限定的使用にとどまるので、以下の評価からは除外して考える。
 現代の科学的研究手法は特定物質の“万能性”ということを前提としていないため、万能性が言説の中心にあるものでは、データを予測できる研究を行うことはできない。強調するならば、このような万能性という言説自体が科学的研究対象からは逸脱してしまっているとさえ言える。

社会的観点

社会での公共性 (低)

 ゲルマニウム健康有効性の源泉として最も代表的なものに「浅井ゲルマニウム研究所」(6)が挙げられ、一般に流布されているゲルマニウム製品の多くが科学的根拠としてこの団体による研究を参照している。
 しかし、「浅井ゲルマニウム研究所」のゲルマニウム健康有効性研究は極めて限定的かつ閉鎖的環境で行われており、公共性を伴っているとは言えない。

議論の歴史性 (低)

 アサイゲルマニウムが源にあるゲルマニウム言説は、浅井一彦氏ほぼ一人によって構築されたものである上、氏から提示された理論について広く議論された様子はない。特に言説内部における批判的な議論や研究は一切ないといってよく、言説の信奉者によってのみ議論が積み上げられてきたことが見受けられる。

社会への応用性 (低)

 ゲルマニウム健康言説は、日本においてすでに一定の社会的な位置を確保している。「ゲルマニウム温泉」、「ゲルマニウムブレスレット」、「ゲルマニウムサプリメント」、「ゲルマニウム水」といった製品も社会に流通しており、一般的な認知も高いといえる(5)。
 しかし、実態としては、「ゲルマニウム」という記号の“科学的側面”を印象上の解釈で用いられていると見受けられる(7)。
 これらのことから、社会への応用性は低いと評価できる。

総評

疑似科学

 本項で特に問題としているのは、アサイゲルマニウムを起源とする言説についてである。この言説における人への健康効果では、浅井一彦氏という個人の逸話的な歴史や経験をなぞり、提示された理論に従った形での後追い研究が行われているのみだといえる。
 他にも、外用ゲルマニウム製品は「マイナスイオン」や「デトックス」など別の疑似科学的言説の一般認知と強く相関しており、「マイナスイオン」を人体に浴びるのは健康に良いことで、それを効率よく行うにはゲルマニウムブレスレットをつければよい、などといった具合に言説同士が結びつき、それぞれに都合の良い形で一般に流布されているようである。
 ゲルマニウム言説では、内用、外用とその用途はさまざまであるものの、根底には“信奉(その形態はさまざまであるが)”が潜在していることが見受けられ、これが最大の問題だともいえるだろう。

参考文献:

(1)『ゲルマニウムと私』 浅井一彦
(2)『有機ゲルマニウムの科学』 石田名香雄 木村郁郎
(3)『新・ゲルマニウムで病気を治す』 志摩春夫
(4)セロシオン国民生活センター 
(5)ゲルマニウムブレスレットについてのページ
(6)株式会社浅井ゲルマニウム研究所
(7)国立健康・栄養研究所
(8)『ゲルマニウム――奇跡の”医療ミネラル”』 大形郁夫
(9)『ゲルマニウム電子浴』 大形郁夫

情報提供、コメント、質問を歓迎します。

(最終更新日時2016年3月28日)

投稿

投稿&回答

インターフェロンとはなんですか? (投稿者:swc02)

インターフェロンとは、免疫系全般を司るサイトカインにおける一生産物質です。サイトカインからはインターフェロン、インターロイキンといった免疫物質が生産されます。
プロパゲルマニウムが慢性B型肝炎の治療薬として用いられているのはこのインターフェロンの働きによるものです。
ただし、インターフェロンにおける代表的な物質は、α、β、γなどがあり、プロパゲルマニウムはγインターフェロンを誘発するのですが、例えばγインターフェロンを活性化させると体内の慢性B型肝炎に対しての免疫力は高まりますが、それ以外のウイルス性の病気に対しての抵抗力についてどういった健康効果があるのか、そもそも健康効果自体あるのかは現在までのところ解っていません。
各種サイトカインが免疫系全般に何らかの影響を及ぼすということまでは判明しています。

プロパゲルマニウムとはなんですか? (投稿者:swc01)

慢性B型肝炎治療薬として用いるゲルマニウムのことです。
慢性肝炎の確定診断が下った場合、ファーストオピニオンとして抗ウイルス薬を用いた療法、肝庇護療法、そして免疫賦活療法が考えられ、プロパゲルマニウムを用いたものは免疫賦活療法にカテゴライズされます。免疫賦活療法とは、端的にいうと人体の恒常性を保つ三要素の一つである免疫系を活性化させ、肝炎ウイルスに対する抵抗力を高めるためのものです。
この療法についてのデータは医学、薬学で相当量集積されていて、用法用量、副作用や禁忌についても厳しく規定されています。
薬事法が非常に厳しい日本において医薬品認定を受けられているという点から、プロパゲルマニウムの効果については一定の評価を与えることができるでしょう。しかし、この事実がゲルマニウムに幅広い健康効果があるような印象作りに使われる恐れがあります。

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