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ブルーベリーエキス

言説の一般的概念や通念の説明

語句説明

 本項では、広く薬局などでサプリメントとして販売されているブルーベリー成分を含んだ製品について、その効力として強く主張されている「ヒトの眼に良い」といった言説について評価する。「ヒトの眼に良い」というのは具体的に眼精疲労や視力回復、その他の眼科疾患について一定の回復効果があるということを意味する。一般的な認知としては「ブルーベリーアイ」などという言葉で馴染まれている。
 ただし、現在のサプリメントやいわゆる健康食品市場におけるブルーベリーの販売戦略は、非常に“巧妙”な手法を用いており、「眼に効く」といったことに対して、前述のような複数の要因をあえて特定しないような用法で記述しているなど、注意が必要な側面が多い。よって本項目ではそういった科学的な姿勢についても全編にわたり言及しながら評価を進める。

効果の作用機序を説明する理論の観点

理論の論理性 (中)

 そもそもブルーベリー成分が眼に良いということが注目されたのは、第二次世界大戦中のイギリス空軍のあるパイロットの好物がブルーベリージャムで、その彼が夕暮れでも物がはっきりと見えたという逸話(この逸話自体にすら疑問がある(1))から始まっている。 それに沿わせる形でブルーベリーの成分分析研究が始まり、現在ではブルーベリーに多く含まれるアントシアニンという成分が視力回復効果をもたらしているという論理をサプリの有効性という主張の主要因としている。また、それだけでなくブルーベリーにはビタミンA相当量が豊富に含まれているため眼に良いなど、他の成分による説明も行っている。
 しかし、アントシアニンが眼に疲労回復効果があるという信頼できる実験結果は報告されておらず、他のビタミンによる説明はブルーベリーだけを指しているわけではなく、他の食品でも説明可能であるため、ブルーベリー成分の論理性の補強にはならない。また、たとえば国立健康・栄養研究所においてビルベリーが特定疾患にのみおいて有効だとの報告もあるが(2)、それにおいても他の食品との比較研究という観点では懐疑的な立場をとっているため、論理的にまだ説明が不十分である(2)。
 さらに、そもそもの根底として、ブルーベリーサプリがヒトの眼の“何に”有効なのか、その対象を特定していない。現代の医学的、生物学的、あるいはすべての科学的な観点からヒトの眼の“不調”について神経系によるもの、内分泌系によるもの、視覚の筋肉の働きの低下によるもの、純粋にエイジングによるものなどと、その説明項を非常に多岐にわたらせている。しかし、ブルーベリーサプリの肯定的な言説では、“効く”“良い”“有効性がある”といった記述のみで、対象を“あえて”ぼかしていると推測でき、その点でも論理不全であるといえる。

理論の体系性 (低)

 上述のように、ブルーベリーのヒトへの有効性は、その成分にアントシアニンが多く含まれることに依存しているので、体系性については、アントシアニンに関する補足説明をすることで評価していきたい。
 まず、アントシアニンは網膜上に存在するロドプシンという光感知タンパク質の再合成に関与している。このロドプシンが分解・再合成を繰返すことで、ヒトは“物が見える”という状態を維持している。そのためアントシアニンを意識的に摂取することで眼の健康状態を維持できるというのが、ブルーベリーサプリ言説の基盤的な論理体系である。
 しかし、そもそも眼の不調が、アントシアニン不足によるロドプシン分解・再合成不全なのか、ブルーベリー成分を取ることが永続的な効果となり得るのか、などの説明は決定的に不足している。さらに、このような“眼の不調”の一般的共通原因は、現代医学の基礎研究では特定されていない。たとえば、純粋な視力の低下は角膜や網膜の異常によるものであり、眼精疲労は視神経の異常を原因としている。さらに白内障や緑内障などにもまた別の原因が考えられている。
 このように、個々の疾患にはそれぞれ様々な要因を考慮するのが現代の眼科における基礎研究である。よって、ブルーベリーサプリの主張の根拠であるロドプシンの分解・再合成が、一般的な「眼の不調」にどの程度かかわっているのかの合理的な体系性はそもそも“存在しえない”のだといえる。

理論の普遍性 (低)

 ブルーベリーサプリの言説では、ヒトの眼のどのような不調に効くのかが明言されていない。そのため、効果対象の普遍性について評価できないといえる。さらに、眼の機能低下の原因には加齢、ストレスなど様々な要因の影響を受けやすく、ブルーベリー成分に原因すべてを適用し、それに普遍的に有効であるとするのは、そもそも困難である。ビルベリーが高血圧網膜症に有効性があるとの研究成果はあるが、それも特定疾患においてのみの有効性のため、普遍的に多くのヒトを対象とするものではない。

実証的効果を示すデータの観点

データの再現性 (低)

 現在のブルーベリーサプリの研究発表のほとんどは、科学的に信頼できるアプローチをとっていない。ブルーベリー成分が眼の機能に回復効果があるという“研究成果”とされる発表は存在するが、そのような報告は実験デザインの段階から不備があることが多く、また「プラシーボ効果」などの予断も排除しきれていない。そのうえ、効果がないという失敗結果が発表されず、効果があるという成功結果が偶然得られた場合が優先的に発表される「お蔵入り」が起きている疑いがある。というのは、眼の自覚症状は数多く、そういった症状をたくさん問うと、ごく一部には偶然、肯定的な結果に至るものが生じるからである。
 確認できる範囲では、中立的な研究機関において、ブルーベリー成分のヒトにおける有効性は示されていない。唯一、ブルーベリーの一種であるビルベリーの成分が高血圧網膜症などの特定疾患には「非常に低水準であるが有効性がある」との信頼のおける研究報告もある。しかし、それについてもビルベリーを大量摂取した場合の安全性や有効性については懐疑的な立場をとっており、また他の食品との比較研究などはまだ行われていないため、その有効性をデータの再現性としてどの程度反映できるかには疑問符が付く(2)。

データの客観性 (低)

 ブルーベリー言説においてもっともよく見かける「眼に良い」という効果を裏付けるデータはないといってよい。たとえば、愛用者の感想などといったものであるならば掃いて捨てるほど報告されているが、生理学的な、視力0.1の対象者が0.7まで回復した、乱視や老眼に改善がみられた、眼精疲労における”他の器官への”自覚症状(頭痛、胃痛など)の軽減がみられた、などについてのデータが蓄積されているとはいえない。個人の主観に頼ったものがほとんどであり、生理学的研究という着想すら見受けられないことが推察される。

データと理論の双方からの観点

データ収集の理論的妥当性 (低)

 ブルーベリー成分を採ることで、果たしてヒトの眼の“何に”良いのかという点か示されておらず、適切なデータを収集しているとはいえない。また、たとえば眼の疲労回復によいといった言説があったとしても、それをアンケート調査(愛用者の感想など)に依存している現状では、適切なデータを測定できているとはいえない。

理論によるデータ予測性 (低)

 前述したように、ビルベリーの特定疾患への有効性や、アントシアニンを大量摂取することにより、眼の疲労改善に一過性の効果はあるかもしれないという主張には、確固たるデータが必要である。その点では、一定の理論で予測することで、将来、データの裏付けが得られるかもしれない(現状で、それができているとは到底考えられないが)。
 ただし、現在のブルーベリーサプリ広告は、実験対象を特定させないような“巧妙”な言説や手法を採っているため、まるで“データ予測性があるかもしれない”という科学的な実態を用いているように見受けられる。

社会的観点

社会での公共性 (低)

 現在日本において、ブルーベリーにおけるヒトの眼への有効性を積極的に研究している団体の存在は確認できない。また、“ブルーベリーアイについての研究”といったものは、そういったサプリメントを販売している企業等が主体となって行われているため、公共性は低いと考える。世界的な動きについても説明すると、日本以外の外国でも「ブルーベリーアイ」や「ブルーベリーの視力回復効果」について研究活動している信頼できる団体は見受けられず、単発的に論文発表がある程度である。
 また、このような状況においてでも「ブルーベリーアイ」といった言説の社会的認知度が高いのは、主にメディアを使った広告戦略が主因であると類推できるが、それについての深い言及は差し控える。

議論の歴史性 (低)

 ブルーベリー成分がヒトの眼に“良い”という言説は、前述のようにイギリス空軍のパイロットの逸話に基づいている。その信憑性に疑いがもたれることは既に述べたが、現在の研究においてはその逸話に沿う形(つまり、盲目的に)で有効性が主張されていることが見受けられ、“議論”が適切に行われているか疑わしい。
 あらゆる食品の中でなぜブルーベリーなのか、という議論が活発にされてきているかとの問いに対し本言説が説得力をもっているとは考えにくく、逸話の継承という文化的な文脈しか見出すことができないだろう。
 また、「眼に良い」という言説について、眼の”何に”よいのかという議論がされてきているとは言い難い。
 ヒトの眼は肉体、精神など様々な要因によって影響を受けやすい器官であるため、たとえばブルーベリーのアントシアニンという成分がどういう作用をすることによって眼に良いのか、という議論は必須なはずであるが、本言説でそれを見ることはできない。これでは、よしんばアントシアニンの多量摂取がヒトの眼に良かったというデータが得られたとしても、それを正当に評価することはできないだろう。

社会への応用性 (低)

 現状、特に日本においてブルーベリーサプリメントは、その効果、対象、社会的実体などにおける科学コミュニケーションが不十分なまま市場での利益優先で社会に広まっている。サプリメント市場全体に言えることでもあるが、特にブルーベリーは他の疑似科学的言説として扱われるサプリメント物質と違って、“天然の果実由来成分”であることが、問題をさらにややこしくしている。
 海外におけるブルーベリーサプリメントの主張では、「眼に良い」といった言説よりも、ダイエット効果やアンチエイジング等の、他の健康効果を中心的主張としている。その範囲であれば、食品として許容できる部分も大きい。
 しかし、日本のブルーベリーサプリメント市場では効果対象の不特定化、言説の根底原理の恣意的な選択、といったおよそ科学的な研究成果とはいえない形での主張が目立つ。これでは“現代人の日常生活では不足しがちであるビタミンを採るために野菜や果物を多く食べましょう”といった伝統や文化の伝播や普及と実質上変わりない。にもかかわらず、効果の差別化のために、科学らしい装いがとられていると言える。

総評

疑似科学

 疑似科学的言説として最もやり玉に挙げられるサプリメントの典型的な事例を本項目から読み取ることができる。初めに「逸話」による仮説の作成、次にそれに沿った形でのずさんなデザインによる臨床実験結果の報告、また理論を補強するために原因物質を“都合よく解釈した形”での基礎的研究、そしてそれを最大限に誇張した社会への産業利用目的での反映、それらは疑似科学的言説に陥るルーチンに合致していると思われる。
 さらに、現在のブルーベリーサプリ研究ではそれら疑似科学的言説の典型形のそのまた上をいく手法をとっている。それが再三述べている研究対象を特定させないような“巧妙”な言説や手法である。ヒトの身体の中でも“眼”は特に外的影響を受けやすく、また心身の恒常性などの内的要因にも敏感に反応する。このように眼の疾患や劣化に対しては複数の要因があり、しかもそれらは複合的に絡み合っている。そのすべてを指すような言い回しを用いることで対象をぼかし、ほんの少しでも有効性の関係があるよう、主張を展開していることが問題である。
 平たく言うと、「ロドプシンの再合成がなされれば、眼の疲労回復に影響を与える」という仮説を否定しきれないのが現代科学の限界である。その状態でありながら、「ロドプシンの再合成の活性化が眼の疲労回復につながる」と断定してしまうことは、科学的にだけでなく倫理的な姿勢としても問題がある。これまでのような言説の“巧妙”な言い回しを改善し、研究対象を「特定化」していくことが科学的アプローチの第一歩であり、その前提があって初めて有効性云々という主張につながるのだろう。

参考文献:

(1)逸話の発端である空軍パイロットに関する記事
(2)「ビルベリーについて」 国立健康・栄養研究所 素材情報データベース
『こんな「健康食品」はいらない!』 若林育子
『眼科医が実証!ブルーベリーは本当に目に効く!』 葉山隆一
「アントシアニンについて」国立健康・栄養研究所 素材情報データベース
「USハイブッシュブルーベリー協会」
わかさ生活 ブルーベリー研究所
視力回復のためのポータルネット
「ビルベリーにおける視覚への影響」 えがおのブルーベリー
「ブルーベリーサプリメント全般の情報」 WebMD(米国における大手医療情報サイト ※ただし、営利団体による情報サイトである)
Lifestyle modification, nutritional and vitamins supplements for age-related macular degeneration(生活習慣の改善、加齢変性黄斑症のための栄養やサプリメント)、Acta Ophthalmologica(北欧眼科学会)、Vol.91 (2013) WebMD
一般社団法人「Food Communication Compass」
「機能性表示食品「えんきん」の根拠は、お粗末すぎる」編集長の視点|松永 和紀 (※旧:ルテイン&ブルーベリー えんきん)

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(最終更新日時2015年8月29日)

投稿

投稿&回答

プルーンについても検証お願いします (投稿者:Egg)

Egg様
ご投稿ありがとうございます。
本研究では皆様から幅広く情報を募集しております。プルーンについても、情報等ございましたらご投稿くださいますようお願いいたします。

結局、目には、どのサプリがいいのですか? (投稿者:swc12)

目の不調の原因は、いろいろ考えられます。まずは、眼科にかかって診断を受け、適切な治療や目薬の処方を受けることが、現在知られている最善の方法です。医学がいつも機能するとは限りませんが、怪しいサプリよりもずっと期待がもてます。

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「アントシアニンについて」
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「ビルベリーについて」
国立健康・栄養研究所 素材情報データベース
USハイブッシュブルーベリー協会
わかさ生活 ブルーベリー研究所
視力回復のためのポータルネット
えがおのブルーベリー
「ビルベリーにおける視覚への影響」
WebMD(米国における大手医療情報サイト ※ただし、営利団体による情報サイトである)
「ブルーベリーサプリメント全般の情報」
WebMD
Lifestyle modification, nutritional and vitamins supplements for age-related macular degeneration
「生活習慣の改善、加齢変性黄斑症のための栄養やサプリメント」Acta Ophthalmologica(北欧眼科学会)、Vol.91 (2013)
逸話の発端である空軍パイロットに関する記事
「機能性表示食品「えんきん」の根拠は、お粗末すぎる」編集長の視点|松永 和紀 (※旧:ルテイン&ブルーベリー えんきん)
一般社団法人「Food Communication Compass」