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牛乳有害説

言説の一般的概念や通念の説明

語句説明

 本項では、牛乳有害説(牛乳有害論)について評定する。牛乳有害説とは、「牛乳は人の体に悪い」という基本的な考えのもと、牛乳が人の健康に与える影響(特に“害”)について論じている言説である(1)。
 牛乳についての基本的な知識として、以下に、まず牛乳の組成成分について記載する。

牛乳の組成(100g当たり)「日本食品標準成分表2010」による

エネルギー 67㎉        マグネシウム 10mg          
タンパク質 3.3g ナトリウム 41mg
脂質 3.8g カリウム 150mg
炭水化物 4.8g ビタミンA 39
カルシウム 110mg ビタミンC 1mg
リン 9mg コレステロール 12mg

 あらためて述べるほどのことでもないが、牛乳の成分において一番に注目されるのは、やはり「カルシウム」だろう。カルシウムはヒトを含む動物や植物の代表的なミネラル(必須元素)であり、骨を構成する主成分である(2)(3)。ミネラルは人体で生成することができないため、生命維持のためには食品から摂取する必要があり、カルシウムはその中でも最も多く体内に存在し、ヒトの体重の1~2%を占めている¹(3)。
 牛乳において強調されるのは、このカルシウムを効率よく取り入れることのできる食品だということであり、反対に牛乳有害説で唱えられているのは、カルシウムを摂取するのに牛乳は相応しい食品であるとは言えず、むしろ健康を悪化させるという主張である(1)(4)(5)(6)。
 しかし、牛乳有害説を厳密に明示化するのは難しく、たとえば、「牛乳を飲むと下痢をするため、消化吸収に優れず、かえって体調を悪化させる」といった弱い主張から、「牛乳を飲みすぎると骨粗鬆症になる(1)」といった強い言説まで様々である。
 そのため、本項では一般通念として用いられる「牛乳が(人体に)有害である」という説明を俯瞰しつつ、強い主張については新谷弘実氏による著書『病気にならない生き方』にて謳われているものを中心的な対象とする。これは、新谷氏の著書が社会的に与えた影響や、これが「牛乳有害説」が広く一般に知られることになった契機であるという指摘に基づいている(4)(5)(6)(7)(8)。

1その内、99%は歯と骨に、残りの1%は血液や細胞外液などに存在している(2)。

効果の作用機序を説明する理論の観点

理論の論理性 (低)

 牛乳有害説の理論では、強い主張においても弱い主張においても消化吸収の問題が、その思想の根底にあるようである(1)(4)(5)(6)。そこで、ここでもまず牛乳の消化吸収における問題――具体的には乳糖不耐症(ラクターゼ欠乏症lactase deficiency)について検討していく。
 日本人を含むアジア系の人種² には、遺伝的に乳糖³を分解する酵素(ラクターゼ⁴)が少なかったり、活性していなかったりする人が多くおり(9)、こういった欠損が認められることを乳糖不耐症という(4)(9)(10)。乳糖とは、牛乳を含む「乳」の大部分を占める糖⁵であり、乳糖不耐症とはすなわち、この乳糖を上手に分解することができず、吸収不良を起こすことを指す。症状としては、牛乳などの「乳」を飲んだ後におこる下痢、腹痛、腹部膨満などが挙げられる(9)。
 この乳糖不耐症が、牛乳有害説を唱える根幹部分の考えとなっていることがうかがえる(1)(4)(5)。つまり、日本人の多くは乳糖を分解し吸収する能力が低いので、牛乳を飲んでも栄養素を取り込めず、しかも下痢などの症状をおこすため健康に悪影響を及ぼす、といった調子である。
 この論理はある程度筋が通っているようにも見えるものの、疑問点もある。
 もっとも強く指摘すべき点は、乳糖不耐症であるからといって、栄養素をまったく吸収できないわけではないということだ(2)(4)(5)(10)。たとえば、カルシウムは主に小腸上部の十二指腸や空腸で吸収されるのだが、乳糖不耐症は小腸で吸収されなかった乳糖が大腸に移行して起こるものである。つまり、作用している体の器官がそれぞれで違うため、栄養素が得られないという説明になっていないことがいえる。
 乳糖不耐症がカルシウムなどの栄養素の吸収を妨げているわけではなく、それらはむしろきちんと吸収されている(5)(10)。下痢=消化・吸収不良というイメージが直観的に想起されるが――確かにそういう意味もあるが――少なくとも牛乳の場合、有害説を唱えるほど強力な根拠とはならない。
 次に、主に新谷弘実氏の著書『病気にならない生き方』にて述べられている「牛乳を飲みすぎると骨粗鬆症になる(1)」といった理論についてであるが、これにはさらに懐疑的にならざるを得ない。以下に、その該当箇所を抜粋する(1)。

 人間の血中カルシウム濃度は、通常九~一〇ミリグラム(一〇〇㏄中)と一定しています。ところが、牛乳を飲むと、血中カルシウム濃度は急激に上昇するそうです。そのため一見すると、カルシウムがより多く吸収されたように思いがちですが、この「血中濃度の上昇」こそが、悲劇をもたらすのです。
 じつは急激にカルシウムの血中濃度が上がると、体は血中のカルシウム濃度をなんとか通常値に戻そうと恒常性コントロールが働き、血中余剰カルシウムを腎臓から尿に排出してしまうのです。つまり、カルシウムをとるために飲んだ牛乳のカルシウムは、かえって体内のカルシウム量を減らしてしまうという皮肉な結果を招くのです。  

新谷弘実『病気にならない生き方』p73

 新谷氏の理論には少なくとも二点、疑問点がある。
 一つ目は、なぜカルシウム量が“減るのか”、という点である。確かに、身体の恒常性という意味において、体に吸収されたもののうち、不要な部分は排出される。しかし、それは体内組織のバランスを保つためであり、カルシウム量が“減る”という意味にはならない。
 体内のカルシウムはホルモンやビタミンの働きによって交換され続けており、それによって濃度を一定に保っている(5)(10)。つまり、たとえ過剰にカルシウムを摂取したとしても(これ自体は褒められたことではないし、別の問題を生じさせるが)、恒常性を一定に保つために余剰部分が排出されるだけであり、“減る”わけではない。
 二つ目は、なぜ牛乳だけがダメなのか、という点である。新谷氏は、小魚や海藻類でカルシウムを補充することは奨励している(1)が、それは、牛乳だけがダメだという説明にはなっていない。仮に、上述の「恒常性コントロール」が働くのなら、小魚や海藻類についても同じ理論が適用されそうであるが、その点には応えていない。
 以上、「牛乳有害説」の論理性という意味において、全般的に合理的な説明はないといえる。

2遺伝的な乳糖不耐症は、農耕民族であるアジア系人種に多く、牧畜民族である北ヨーロッパ系人種に少ないことが示唆されているが、これには諸説がある(後で詳述する)(9)(10)。

3ちなみに、乳糖は英語でラクトースといい、「ラクト」はラテン語で「乳」を意味している。

4ヒトを除くほとんどの動物では、出産直後にはラクターゼが存在するものの、その後消失するが、ヒトでは多くの場合、ラクターゼの活性は生涯存在する(9)。

5一般に食品の糖質はデンプン、二糖類(ショ糖、乳糖)、グルコース(ブドウ糖)の形態で保有されている(9)。

理論の体系性 (低)

 牛乳有害説では多くの面において、既存の学術的知見と合致しない説明がある。乳糖不耐症については既に述べたが、ここでは特に、新谷弘実氏の言説に焦点を当て、その中でも「牛乳を飲みすぎると骨粗鬆症になる(1)」といった主張を中心的に取り上げる。これは、新谷氏の著書『病気にならない生き方』が、(少なくとも日本において)確認できる範囲では初めて「牛乳を多く飲むと骨粗鬆症になる」といった言説を展開しているためである(1)(4)(5)。
 骨粗鬆症とは、平易な言い方をすると「骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気」である(9)(11)(12)(13)。骨の強さ(骨強度)は骨の量(骨密度)と骨の質(骨質)で決まり、骨粗鬆症とは、それらが悪くなった状態のことを指す。骨は通常、骨吸収と骨形成を繰り返している――つまり、古い骨を壊し新しい骨を作っているのだが、そのサイクルに支障をきたすと骨粗鬆症になる⁶(12)。
 骨粗鬆症の危険因子の一つとしてカルシウム摂取量の不十分性が、現在医学的に広く受け入れられている知見である(9)。一日の総カルシウム摂取量が400mg未満であると骨格に悪影響を及ぼすとされ、現在、(日本人の)成人においては一日に1000mg~1200mgの摂取が医学的に推奨されている(9)。そして、カルシウムを多く含む食品として牛乳、あるいは乳製品が代表例として示されている(9)。
 繰り返しになるが、この骨粗鬆症について、新谷氏は牛乳の多飲が発症に影響を与えているという説を展開している。この言説の背景には、アメリカ、スウェーデン、デンマーク、フィンランドなどの酪農がさかんで牛乳を大量に飲んでいる国では骨粗鬆症が多い、という説があり、また、新谷氏がその科学的根拠としているのは「Milk, Dietary Calcium, and Bone Fracture in Women」D. Feskanich et al American J. Public Health,Vol. 87, 991~997 (1997)と、WHOによる「カルシウム・パラドックス⁷」に関するレポートである(5)(7)(8)(14)。
 しかし、前者の論文は牛乳多飲によって骨粗鬆症の予防効果はなかったとしているだけのものであり、牛乳が発症に影響を及ぼすという因果関係を述べたものではなく、有害であるという言説を裏付けるものでもない。また、後者のWHOのレポートに関しては、そもそも牛乳の多飲について触れてすらいない(5)(8)(14)。
 以上のように、少なくとも牛乳多飲が骨粗鬆症発症に影響を与えるという言説は整合的とはいえない。

6女性ホルモンが骨の新陳代謝に関わっているとされるため、一般に、骨粗鬆症患者には女性が多い(9)(12)。

7カルシウム・パラドックスとは、カルシウムの摂取量が多い国では、かえって骨折が多いという現象のことである。ただし、カルシウム摂取量との因果関係はまだわかっておらず、WHOはこの原因解明の必要性について指摘している(5)。

理論の普遍性 (低)

 人間にとって牛乳が有害であるという言説が支持されるならば、非常に普遍性の高い理論であるといえる。しかし、現在のところ牛乳有害説は、言説の内部的(論理性)にも外部的(体系性)にも理論的に多くの矛盾がみられ、普遍性を装っていることが推察される。
 ただし、牛乳有害説が普遍性を装う背景には、「牛乳には栄養素が豊富にあるため、牛乳さえ飲んでいればよい」といった、牛乳が「完全食品⁸」であるとの、いわゆる牛乳神話という“誤信”が広く一般に受け入れられすぎているのではないか、という疑問を出発点としている面も(多少だが)見受けることができ(1)(5)(10)、この点に関しての言及は必要だろう。

8完全食品とは、端的に言うと、栄養をバランスよく豊富に含む食品のことである(7)(10)。

実証的効果を示すデータの観点

データの再現性 (低)

 直接的に牛乳が有害であるとの言説を支持する研究データは収集されていない。
 牛乳などの乳製品と骨粗鬆症に関する研究は多くあり、骨粗鬆症の予防に効果はない、といったデータも少数だが報告されている(7)。しかし、それは“牛乳が有害である”ことを裏付けるデータではなく、(牛乳有害説がそれを根拠とすることは)研究結果の誤用であることが見受けられる(5)(7)。
 また、多くの研究データから牛乳の飲用は骨の健康や骨粗鬆症の予防に役立つとの結果が得られており(2)(5)(7)(11)(15)、こうした意味からも、牛乳有害説のデータの再現性は低い。

データの客観性 (低)

 再現性の項目で述べたように牛乳有害説の根拠とされているデータは、統計データの取り違えや研究結果の読み間違えなどによる誤用であることが見受けられる(5)(7)。そのため、そもそも牛乳が有害であるという科学的根拠となっておらず、肯定派の示すデータの客観性には大いに疑問がもたれる。
 その中でも『病気にならない生き方』の著者、新谷弘実氏に対して牛乳乳製品健康科学会議が送った公開質問状、およびその回答(5)が顕著な例として挙げられる。
 たとえば、①ホモジナイズ⁹することにより、生乳に含まれていた乳脂肪は酸素と結びつき「過酸化脂肪」に変化する(1)、②牛乳に含まれるたんぱく質の約八割を占める「カゼイン」は、胃に入るとすぐに固まってしまい、消化がとても悪い、などの主張が新谷氏によって展開されており、それぞれ、①「Homogenization of milk and milk products」Milk Homogenization and Heart Disease,Mary G. Enig, PhD(大学の教科書的HPの一節)と②「Milk」(オレゴン州立大学の教科書だと思われる)がその根拠として提示されている(5)。
 しかし、①②にはともに新谷氏の主張を裏付ける記述はなく、統計データの誤用、もしくは恣意的な文脈の選択があることがうかがえる。
 以上のように、研究データそれ自体は信頼できるが、それを“使う”言説側に問題があることが見受けられ、そういう意味で客観性も低評価とする。

9ホモジナイズ牛乳とは、人の手によって成分が「均質化」された牛乳の事であり、ノンホモジナイズド牛乳とはその過程がないもののことを指す(2)(6)。両者は主に脂肪球の均一化という意味において特に意を異にする(2)(6)(10)。

データと理論の双方からの観点

データ収集の理論的妥当性 (低)

 データの再現性、データの客観性の項目で述べたように、牛乳有害説を示すデータは他の研究結果の誤用にあり、理論に合致したデータを収集しているとはいえない。
 牛乳消費量の多い国に骨折が多いという相関データが得られたとしても、それらの国が高緯度地域で日射量が少なく、骨形成に必要なビタミンDの生成量が少ない可能性や、それらの国に長身で脚の骨の長い人が多く、骨折頻度が高い可能性が指摘でき、有害説を主張する妥当性は低い。
 また、牛乳有害説では、研究論文や臨床データの中から「牛乳が有害である」という結論を導くために都合のよい部分のみを切り取り、あるいはそれを極端に誇張した形で発信することで、かろうじて成立しているとさえいえ、妥当性のある評価がされているとは言い難い¹⁰

10これと同様の指摘が前述の牛乳乳製品健康科学会議からされている(5)。

理論によるデータ予測性 (低)

 仮に牛乳が有害であるならば、本来ならば、どういうカテゴリーに属するどのような人が対象なのか、あるいはそのような人たちがどの程度の牛乳を飲用すると“害”となるのか、といった検証を行わなければならないのだが、実際には倫理的な問題¹¹が伴うため、それが困難であるという面があることは否めない。
 しかし、たとえば、ヒトのアレルギー症状の中でも最も強力なもののうちの一つである牛乳アレルギーについてはその発症機構はかなり細かく解明されており、症状への制御についても研究されている(2)(9)。また、牛乳に限らず、カルシウムの一度の摂取量の上限は600mgとされており¹² (9)、牛乳有害説のみが特別に検証不可能な理論ともいえない。
 牛乳有害説ではこのような研究を言説補強の論拠として引用いることがうかがえるが(5)、“牛乳が有害である”ことを直接示した研究はなく、データの予測もできない状況にある。

11当然のことだが、人体を傷つけることが“目的である”実験は、現代で奨励されることはない。

12これは、高用量ではカルシウム吸収率が低下するためである(9)。

社会的観点

社会での公共性 (低)

 現在、牛乳が有害であるという言説は、その根拠が不明瞭なまま一般に流布されていることが懸念される(4)(7)。特に、新谷氏の著書による影響は大きく、牛乳と科学に関する学術団体である牛乳乳製品科学会議による公開質問にまで至ったことは言及すべきだろう(5)。
 また、最近(2015年時点)ではTV番組にて芸能人が牛乳有害説を支持していると述べ、物議をかもしたことは記憶に新しい(16)(17)。
 このように、牛乳有害説は社会的に御しきられているとは言い難く、データよりも直感が先行して一般に認知されているとさえ見受けられる(4)(16)(17)。行政機関などの多くの団体が警告、提言を発信してはいるが、それよりも有害であるとの説の方が“感染力”が高く、公共性が保たれているとはいえないだろう。

議論の歴史性 (中)

 牛乳が有害であるという言説が、いつ、どこで生まれたのかを特定することは難しい(10)。新谷氏による有害説が最も認知度が高いとはいえるだろうが、それ以前にも、牛乳が人体に有害であるという言説が“存在”していたとの指摘もある(10)。
 こうした背景には、牛乳が「完全食品」であるという、いわゆる牛乳神話に対する不信を読み取ることができる(5)。この意味においての議論は(最低限)考慮には値するが、少なくとも現在の牛乳に関する学術団体は牛乳神話に否定的であり、「完全食品」であることを謳っているわけでもない(5)(8)(10)。そして、新谷弘実氏と牛乳乳製品健康科学会議との論争に見るように(5)、両者にはある種のディスコミュニケーションが生じているといえる。
 他にも、乳糖不耐症について文化人類学や進化心理学の文脈にて語るべき問題なのか、それとも生理学分野のみで説明可能な事象なのかについては現在も議論が続いており、統一した見解には至っていないなど(2)(9)、残された課題もある。ただし、そもそもこれも牛乳有害説における直接的な議論ではない。
 以上から、議論の歴史性は中と評するが、これは、牛乳有害説において建設的な議論が形成されてきたということを意味しているわけではない。

社会への応用性 (低)

 牛乳有害説の社会への応用性は低いと評価した。上述のとおり、有害説は論理性が乏しく、根拠として用いられているデータも客観性に欠けたものである。
 しかし、本言説が広まることにより、実際に害はないにもかかわらず牛乳を忌避する人が増える可能性がある。日本人においてはカルシウム摂取量の不足が指摘されており、良質なカルシウム源である牛乳を他の食品と併せて適量摂取することはむしろ望ましいことである(3)(8)(9)。
 乳糖不耐症や牛乳アレルギーのような特定の疾患は別として、牛乳そのものが人間にとって有害であるという言説に有用性を見出すことは(現在のところ)難しい。

編集協力:anonymous様

総評

疑似科学

 牛乳が有害であるという説に関して、合理的な説明を与えることもできなければ、それを示唆するデータもない。少なくとも骨粗鬆症における有害説の理論はほぼ完全に破綻しており、他の研究データの誤用などによって、なんとか体裁だけが支えられているという状態にあるといえる。換言すると、言説のつじつまをあわせるために研究データを引用しているのだ。
 また、公共性の項目でも述べたが、芸能人など社会的影響力のある個人をも巻き込みながらこうした言説が流布されていることが見受けられ(16)(17)、一般への“広まり方”も高いことがうかがえる。
 乳糖不耐症によって下痢症状などがあらわれ、牛乳を飲むことが不快であると感じている人は、個人としては多くいるだろうが、前述のように牛乳の栄養素はきちんと吸収されているため、牛乳⇒有害という構図は一般化されえないだろう。
 牛乳有害説が信奉される背景には、いわゆる「牛乳神話」への不信を読み取ることができる。この点においては、有害説にも一分の理があるように思えるが、だからといってそれが無条件に受け入れられるわけではない。
 「有害である」との言説を疑似科学として論じることは、牛乳飲用によって“現に困っている(被害をこうむっている)”個別の事例を切り捨ててしまう危険性を伴うかもしれない。ただ、電磁波などとは違い、仮に自身に被害がある場合でも、牛乳有害説は「個人で対処が可能」な言説¹³であるため、疑似科学であることをあえて強調したい。

13現代の文明社会において、電磁波を回避して生きていくことは実質的に不可能であるが、牛乳を避けることはできるだろう。

参考文献:

(1)『病気にならない生き方』新谷弘実
(2)『乳の科学』上野川修一/編
(3) http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail660.html 「カルシウム解説」健康食品の安全性・有効性情報 国立健康・栄養研究所
(4)『謎解き超科学』ASIOS
(5)http://www.zennyuren.or.jp/news/kaitou/kaitou.htm 「新谷弘実医師の回答書の内容等について牛乳乳製品健康科学会議の見解」牛乳乳製品健康科学会議(平成19年12月18日)
(6)『本物の牛乳は日本人に合う』小寺とき
(7)http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/4383/00017224/kouza2.pdf 「(牛乳)研究者からみたフードファディズム」仁木良哉
(8)https://www.rakuno.ac.jp/news/200608/news15.html 「ミルクと酪農の真実と未来」酪農学園大学連続公開シンポジウム「ミルクの科学~牛乳の正当な評価~」仁木良哉氏 北海道大学名誉教授
(9)『ハリソン内科学 第三版』黒川清・福井次矢/監修
(10)『牛乳読本 だれでもわかる牛乳の新知識』土屋文安
(11)http://www.jpof.or.jp/ 公益社団法人 骨粗鬆症財団
(12)http://www.eisai.jp/diseases-and-symptoms/osteoporosis/ 「骨粗鬆症ってどんな病気?」エーザイ株式会社
(13)https://www.takeda.co.jp/patients/osteoporosis/index.html 「骨粗しょう症ガイド」武田製薬株式会社
(14)「Milk, Dietary Calcium, and Bone Fracture in Women」D. Feskanich et al American J. Public Health,Vol. 87, 991~997 (1997)
(15)http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/07315724.2000.10718088 「Calcium, Dairy Products and Osteoporosis」 P. Heaney J. American College of Nutrition Vol.19, 83-99, 2000
(16)http://www.tv-asahi.co.jp/mininaru/backnumber/0118-2/ 「中居正広のミになる図書館」「知らなきゃ良かった!」第31弾[2015年7月7日放送]
(17)http://www.j-cast.com/2015/07/22240789.html 「松嶋尚美の「牛乳有害」発言に批判相次ぐ 専門家も「科学的根拠に基づかない」とばっさり」J-CASTニュース

・『グルコサミンはひざに効かない』山本啓一
・『牛乳・乳製品Q&A集』社団法人 日本乳業協会
・http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/houkoku/1298713.htm「日本食品標準成分表2010」文部科学省

情報提供、コメント、質問を歓迎します。

(最終更新日時2015年12月6日)

投稿

投稿&回答

■カルシウムは必要以上に摂らないほうがいい■
カルシウム石灰化スコアをはじめ血中カルシウム濃度は低く保ったほうがよい。

骨化の面では、カルシウムの摂取よりその他栄養素の摂取のほうが100倍大切。

詳しくは下記より確認ください。
http://joushiki3.blogspot.jp/2014/10/c-no-no-no-800iud-400iu-jackson-et-al.html

(投稿者:牛乳ははっきりいって有害,投稿日時:2016/02/08 17:33:08)

(回答日時:2016/02/09 15:55:58)

ESPや水素水の「理論の論理性」が「中」だったら、牛乳有害説のそれは文句なしに「高」だろう。 (投稿者:有機化学研究者,投稿日時:2016/01/10 17:03:17)

(回答日時:2016/01/13 16:45:00)

無責任な言いようで申し訳ないのですが、この評定の文章を損ねることなく上手く表現する文言を考えたのですが、なかなか思いつかず、「栄養は吸収されるが無理に飲むことは薦めないというような一文をいれる」というような表現になってしまいました。
一応、考えてみた記述案をここに記しておきます。「理論の論理性」という評定自体の題目とは異なってしまいますが、この項目内の「乳糖不耐症がカルシウムなどの栄養素の吸収を(中略)少なくとも牛乳の場合、有害説を唱えるほど強力な根拠とはならない。 」という部分が誤解を生みそうなので。この箇所に「栄養は吸収されるが無理に飲むことを薦めるものではない」「あくまで有害説を唱えるほどの強力な根拠とはなりえないというだけであり、乳糖不耐症の場合は牛乳以外からの該当栄養素摂取も可能であるため無理な牛乳摂取は薦めない」などの注釈を入れるのはいかがでしょうか。
一案として提示させていただきましたが、文章全体がきちんと作られているので、私が変に注文を付けてしまうと全体が崩れてしまうことも考えられます。そのためあくまで一案にとどめさせていただきたいと思います。私の文章の転用もご自由に判断なさってください。
あえて私の要望といたしましてはこの評定文を損ねないようにしていただきたいという一点であります。 (投稿者:cheapie,投稿日時:2016/01/06 11:37:54)

ご返信ありがとうございます。
ご提供いただいた内容は吟味の後、評定に反映させていただきます。

(回答日時:2016/01/07 23:56:22)

「牛乳有害説」を年末の忘年会の2次会で行ったカラオケスナックのママさんが主張するので、その時は僕も「根拠」を持っていなかったのでまともな「反論」が出来ずモヤモヤして帰宅したのですが、年末年始休暇でヒマがあったのでネット検索して明治大学科学コミュニケーション研究所に辿り着きました。

そして、出典論文もすべて明らかにされている「評価」と言うか、限りなく客観性を担保したassessmentに圧倒されました。

僕は病院勤務者ですので、新谷氏に限らず、近藤誠氏のような医師もおり、それらの非科学的(疑似科学)な言説が一般社会に広がっていることに強い危機感がありました。
医学界ではEBM(Evidence-Based Medicine)がごく当たり前に教育される時代になっています。
僕の病院も臨床研修指定病院として毎年数名の研修医を受け入れて来ましたが、これほどEBMを乱暴に無視した議論は看過できないし、研修医・患者さんにも悪影響が大き過ぎます。

いかに「言論・出版の自由」が憲法で保障されているとはいえ、科学的根拠の無い「自説」を流布するのは犯罪的であると僕は考えています。

明治大学のこのHPに掲載された記事は大晦日から今日まですべて読了しました。

全面的に賛同します。

また、この素晴らしいHPを多くの職員(約3800人)にも知ってもらえるようにイントラネットでも紹介しました。
無断でご紹介した非礼をどうかお許し下さい。

僕の勤務病院にも明大出身者が医事課におりますが、明大はすごい社会活動をしていると思います。これこそ、「最高学府」としての真骨頂だと思います。

研究所の益々のご発展を新年の祈りとしたいと思います。
(投稿者:飲兵衛,投稿日時:2016/01/03 17:41:31)

ご投稿ありがとうございます。
今後も本研究をよろしくお願いいたします。
本ホームページを上手にお使いください。また、積極的な参画もお待ちしております。
ありがとうございます。 (回答日時:2016/01/05 23:36:21)

全体の内容はいいとおもいます。
ただ、乳糖不耐症について栄養学面のみで議論を終わらせるのは危険ではないかと思いました。
『乳糖不耐症や牛乳アレルギーのような特定の疾患は別として、牛乳そのものが人間にとって有害であるという言説に有用性を見出すことは(現在のところ)難しい。』と最後に書かれているのでちゃんと読むと大丈夫ですが、読み手の受け取り方しだいでは、「栄養はとれるのだから牛乳を飲んで下痢になっても健康上の問題はない。」と思われかねないように思います。
QOLの観点からも、『有害説を唱えるほど強力な根拠とはならない』で終わらせることなく、栄養は吸収されるが無理に飲むことは薦めないというような一文をいれることはできなかったのでしょうか。
そうでなくては、ただ反論したいというだけで、読み手など無視しているような印象を受けてしまいます。
科学検証一辺倒になると、得てして本来道具であるはずの科学が目的となってしまうのではないかと愚考いたします。 (投稿者:cheapie,投稿日時:2016/01/02 07:59:12)

cheapie様
ご投稿ありがとうございます。
ご指摘の件、確かにそういう印象を与えかねない文体となっていますね。適切なご指摘、ありがとうございます。
そこで、たとえばcheapie様の前回の投稿の一節を転用する形(おそらく注に落とすことになりそうですが)で該当箇所の改訂を行ってもよろしいでしょうか。
もしくは、該当箇所についてcheapie様に記述案などがあればご提示いただければと思います(このように書くと、挑戦的な表現と思われるかもしれませんが、こうした閲覧者様方との試み(参画)こそ本研究の目指すところでありますので、ご容赦ください。むしろ好意的に書いているつもりですらあるのですが、文章にするとやはり冷たい印象を与えてしまいますね……苦笑)。
(回答日時:2016/01/05 23:56:19)

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