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占星術

言説の一般的概念や通念の説明

語句説明

 占星術とは、ある瞬間の天体の配列が地上の出来事に影響を及ぼしているとし、人間の性質や将来の見通しを予測するというものである。
 占星術はメソポタミアを起源とし、古代エジプトで体系化され、ギリシア、ローマ、アラビアにおいて発達した(2)。本項目では、そのような系譜の中で一般的に「西洋占星術」¹と分類されるものを中心に言及していく。
 また、占星術には少なからずアート(芸術的技法)や文化としての意味があるが、ここではそれらは評定の対象とはしない。あくまで、“科学的に研究されてきた(されている)対象”としての占星術のみを扱い、記述していく。

1実践的な占星術では、惑星の性質、獣帯(12星座)、季節、アスペクト(角度)、ハウスなどから、それらを構成要素として描きこんだ「ホロスコープ」を用いて解釈を行う(1)(2)。

効果の作用機序を説明する理論の観点

理論の論理性 (低)

 広く知られているように、占星術は天文学²と切り離せない関係にある。古代では多くの知識人が占星術を支持し、天文学者兼占星術家だったことも見逃せない(1)。
 一般的に天文学が占星術から分離していく過程は、コペルニクスの地動説によって見ることができる。科学としての天文学、迷信としての占星術が確立されていった最も中心的な“変化”であったことは間違いないだろう。
 ただし、占星術批判は何もコペルニクスから始まったわけではない。それ以前も、天文学は科学だが占星術は迷信だという懐疑的な意見は多くあった(2)。
 また、技術の発達につれて新しい惑星が発見されると、占星術ではそれらに対し“独自の解釈”を加えたアド・ホックな説明を行ってきたことが指摘できる(1)。霊魂論、心理学、医学などとの組み合わせや、キリスト社会、イスラム世界、中国占星術など時勢や文化と併合し生き残りを図ってきたという見方もでき、論理として一貫性に乏しい。

2西洋中世においては天文学も占星術も用語としてはastrologiaが用いられ、明確に区別されていないことも見受けられる(2)。

理論の体系性 (低)

 占星術の理論体系は天動説に依拠しているため、現代の自然科学的知見とは整合性がとれない。占星術はプトレマイオス的宇宙観に沿って「知として形成」されてきたため、それが覆されると内部のほとんどの理論が他の学術的知見と矛盾してしまう。
 また、占星術では惑星や星座の関係性が人間に何らかの影響を及ぼすとしているが、現代の物理学や天文学的見地からはそのような所見は見当たらない。

理論の普遍性 (低)

 占星術では独自の解釈によって、人間の心理状態を部分的にでも引き出すことができ、それで一見すると普遍性が高いように見える。しかし、広く知られている「バーナム効果」「確証バイアス」「自己成就」などの心理効果や「コールドリーディング」や「ホットリーディング」などの一種の詐欺的技術によって“占い行為”が当たる現象が説明できてしまい、まさに、普遍性が高いように見えるだけあると考えられる(占星術専門家においてもある種のごまかしがあることは認めている(1))。

実証的効果を示すデータの観点

データの再現性 (低)

 占星術において、実証主義的なアプローチによる研究報告はこれまでほとんどない。科学的根拠とされるものでは1950年代にゴークラン夫妻が行った研究がほとんど唯一のものとして挙げられる(1)(3)。 ミシェル・ゴークランとフランソワーズ・ゴークランは、惑星の位置と人々の職業的傾向との相関関係について調査を行い、統計学的データに基づいて占星術の有効性を示唆した。たとえば、傑出した運動選手が誕生するときの火星の位置の傾向性、政治家の誕生と木星の位置関係などが報告されたのだ(3)。
 しかし、その報告においてさえ、職業選択における他の社会的要因と比べて惑星による影響は(有意水準ではあったものの)あまりにも小さすぎ実際に使用するには再現性に乏しいことが指摘されている。
 たとえ膨大な逸話の累積があったとしても、それだけでは再現性を保証することはできず、前述のゴークラン夫妻の研究を加味しても評価は低い。

データの客観性 (低)

 コペルニクスの地動説によってほぼ完全に天文学と分離して以降、占星術は統計学的手法による客観性をほとんど重要視しておらず研究もほとんど行われていない。文化や風習としての面が強調されてきた。
 客観性を推し量れるほとんど唯一の報告は、前述のゴークラン夫妻の研究のみといってよい。

データと理論の双方からの観点

データ収集の理論的妥当性 (低)

 ゴークラン夫妻の研究では弱い相関関係だったが妥当なデータが収集されていた。しかし、それ以外は主に逸話や神話的な信奉を積み重ねているに過ぎず、占星術の有効性を示唆できるデータではない。

理論によるデータ予測性 (低)

 繰り返しになるが、占星術は天動説を理論の根拠としている点でデータ予測性は低いといえる。
 また、ゴークラン夫妻の研究のように惑星の位置関係と何らかの関係性を示唆するデータを測定することも可能なのだが、かなり大規模な調査になるため実現されていない。

社会的観点

社会での公共性 (低)

 現在占星術において、科学的な研究方法を用いて活動している団体は確認できず、個々の「専門家」を名乗るものによってその社会的な存在が保たれている。多くの占星術「専門家」はそもそも科学性を謳っておらず、文化的意味を強調している。
 海外においても同様の傾向であり、英国占星学協会、米国占星学者連盟といった団体はあるものの、活動の大部分は実践や普及であり、実証主義的な研究は重要視していないように見受けられる。
 このように、信頼判断の全権を消費者などの利用者側に委ねていることは、社会的な公共性の低さを表しているといってよい。

議論の歴史性 (高)

 占星術の歴史は長く、その中で絶えず批判にさらされてきた。コペルニクスによる地動説が支持される以前にも、占星術に懐疑的な知識人が多くいたことは特筆されることだろう(2)。アウグスティヌス、トマス・アクィナスなどが挙げられる。トマス・アクィナスにおいては、天体の運動が人間事象に影響を与えているという占星術の基本的な枠組みは肯定しつつ、しかし、その妥当性は一部分に過ぎないとの理論を展開している(2)。
 一方で、古代ではヒポクラテス、近世にかけてはユングやパラケルススといった当時の「科学者」³たちが占星術を支持していたことも事実である。医学の父とされるヒポクラテスは、身体の「四体液説」に占星術的な意味における惑星との関係を積極的に取り入れようとした。また、パラケルススにおいては瀉血や水銀治療の患者への適用量や時期などを占星術に頼っていたとの考察もある(1)。
 以上のように、占星術は歴史的に無批判に受け入れられていたわけではなく、むしろ執拗に肯定論と否定論が繰り返されてきた。天動説が支持されていた中世までにおいても否定論が存在していたことは意味ある「目録」といえる。

3厳密な意味では、いわゆる「職業科学者」が現れるのは19世紀後半になってからであるが、ここでは簡略的に「科学者」という用語を用いる(4)。

社会への応用性 (中)

 現在、我々が社会生活を送るうえで「占い」といったものを目にしない日を探すほうが難しいだろう。日本において「占い」、特に西洋占星術はポピュラーであり、特定の社会的な位置を獲得しているといえる。
 占星術は現代社会においても幅広く応用されている。たとえば、週7日制は天動説に基づく占星術の名残であり(1)、現在では生活環境の中に完全に根付いている。また、心理学の面から見ると、何かに迷っているときに「占い」を“使う”ことは「認知的節約」につながる。「本日のラッキーカラーは黄色です」といわれれば、服装や装飾においてわざわざ深く考えることなく“決める”ことができるだろう。
 以上のように、占星術における社会への応用性を低いとは評価しきれない側面がある。
 高額なお布施や無益な投資には“個人レベル”で注意を払う必要があるが、社会的な応用性は中と評価する。

総評

疑似科学

 コペルニクスによる地動説が一般に受け入れられるにしたがって、天文学と占星術は別々の道を進み、特に科学的研究においてそれが顕著となっていった。
 占星術では、惑星が人間に何らかの影響を及ぼすのではないかという前提のもと、超自然的な関係性に目を向けているが、その論理の根幹には天動説をはじめとした自然科学では受け入れられないものが多々ある。
 「たとえ疑似科学、オカルト的言説であっても社会的な需要に応えている」というのが占星術コミュニティの主張であり、ある意味では的を射ている。少なくとも、占星術の社会的な役割について批判する権利を科学は有していない。地動説が受け入れられてもなお生き残っている占星術は、もはや科学的な議論の枠組みを乗り越えてしまったといえるのかもしれない。
 占星術が「疑似科学」であることよりも、このような社会的断絶のほうが根本的問題なのかもしれない。

参考文献:

(1)『世界占術大全』 アルバート・S・ライオンズ
(2)『科学思想史』 金森修
(3) http://www.theoryofastrology.com/gauquelin/mars_effect.htm 「Is There Really a Mars Effect?」 Michel Gauquelin Journal of Astrological Studies, Issue 11, Fall 1988, pp. 4-7.
(4)『科学者とは何か』 村上陽一郎
『「占い脳」でかしこく生きる』 鏡リュウジ

情報提供、コメント、質問を歓迎します。

(最終更新日時2016年1月13日)

投稿

投稿&回答

http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-3117205/Your-birth-month-DOES-determine-ll-sick-Researchers-reveal-ailments-risk-from.html

月別の疾病の偏りについてニュースで報じています。 (投稿者:kokko,投稿日時:2017/09/27 20:31:41)

情報ありがとうございます。
元論文確認しました。
なかなかユニークな研究ですね。追試等に期待したいところです。ただ、当該研究では対象疾患にあまり一貫性がみられないので、そのあたりへの理論的な補強が必要にも思います。
(回答日時:2017/10/02 15:21:01)

先日、海外の研究論文で誕生月によってかかりやすい病気、かかりにくい病気に有意に差があるという報告がありました。
これは乳児期に過ごした季節が免疫に影響を与えるというような、色々な解釈が可能でしょう。そして免疫に影響があるならば、苦手な病気などへの忌避感情から転じて性格や行動性にも影響があるかもしれません。
また、時期別の感情・行動傾向についても、それは太陽の高度の関係などから誕生月別の感情サイクルの位相を見て、ざっくりとした分析が出来ても違和感が無いようにも思います。
未科学とすべきが妥当ではないでしょうか? (投稿者:koko,投稿日時:2017/09/22 19:14:48)

ご投稿ありがとうございます。
>海外の研究論文で誕生月によってかかりやすい病気、かかりにくい病気に有意に差があるという報告がありました
――この報告の詳細を知りたいのでお教えいただければ幸いです。
>未科学とすべきが妥当ではないでしょうか?
――そうですね。現状ではデータ不足だと思われますが、先に挙げていただいた報告のような研究が積み重なれば未科学~発展途上の科学と評価できるかもしれません。。
(回答日時:2017/09/25 14:31:25)

天体と人との相関性を医学に取り込んだのが、占星医学といわれるものであるが、それに現代的な科学の言葉をまぶすと、波動による治療が可能ということになる。
二つの現象を科学的根拠なく、ただ表面的な類似を結合させたにすぎない。
オカルトの波動は量子力学と無関係であるが、詐欺商法をやる人間にとってはこれほど便利なものはない。 (投稿者:maprmed70,投稿日時:2016/01/30 12:54:29)

(回答日時:2016/02/09 15:53:08)

なぜ知識伝承の空白が存在し穴だらけとなったところを商業性・宗教性などで埋めた「現代西洋占星術」をメインに据えたのでしょうか。
ここで扱った占星術の大半については評定する以前に、商業占星術の方だとしか思えません。
「占星術」という疑似科学の科学性評定ならば、商業占星術ではなく太古から今日まで継承されている「占星術」を扱うべきではないでしょうか。
商業性を帯び簡便化されていない、もっと緻密で昔からの積み重ねがしっかりしているものが科学から分岐していった疑似科学としての占星術であり科学性評定を行うに値するものだと思います。
正しく占星術を伝承してきた方が少なく、また占いコーナーなどありきたりで分かりやすいものが散乱した弊害だと思うのですが、少しそれっぽくした商業占星術が占星術だと扱われていることが非常に残念でなりません。
商業占星術と占星術を同列に扱うことは占星術師の方に失礼だと思います。
私は偶然、少しだけその方面の知識を持っている方にあったことがありお話を聞いたことがあるのですが、はっきり言って一般に流布されているものとはまったくの別物でした。そしてほとんど理解できませんでした。元来の占星術の評定を行っていただけることを切に望みます。 (投稿者:cheapie,投稿日時:2016/01/02 11:56:24)

仰る通りですね。
学問として「占星術」を研究されている方は大勢いますし、本サイトもそうした研究を全く無下に扱う意図はありません。
ただ、実証主義に照らし合わせた場合、まさにご指摘の通りなのですが、「少しそれっぽくした商業占星術」がこの問題の根底にあるかと考えます。
一応、そうした文言を語句説明にて断っているのですが、全体としては不親切な書き方といえるかもしれません。
再考し、対応させていただきます。 (回答日時:2016/01/09 23:01:55)

【1】ノストラダムスの大予言については、ノストラダムス本人がどうこうではなく、彼の「予言」なるものを強引な翻訳も含めて都合よく解釈して商売に利用した人たちがいたということでは? 占星術との関係は乏しいように思えます。

※ちなみに、ノストラダムスの大予言をさんざん煽ってきた張本人は1999年の7月より前に自己批判をして上手に逃げています。毎号のようにノストラダムスの大予言を取り上げてきた某オカルト雑誌は1999年の7月に発売された号に翌月号の広告を載せていました。

【2】疑似科学というのは、「科学と称している」または「科学っぽい装いをしている」が実は科学ではない場合をいうのではありませんか? ガラスの玉はダイヤモンドだと主張すればニセモノになりますが、ガラスの玉そのものはニセモノではありません。占星術の場合、占星術師が「これは科学だ」とか「占いには科学的な根拠がある」といえば疑似科学となるでしょうが、そうでなければ遊びや人生相談のようなものでしょう。

【3】占星術で問題とすべきは、一部で科学的な根拠があると謳っている点です。例えば、誕生星座と職業との間に相関があるとか、満月の日には犯罪が多いとか、満月や新月の日には出産が多いとかいった俗説です。そういった部分こそ踏み込んで批評すべきだと思うのですが? (投稿者:アナテマ,投稿日時:2016/01/01 20:56:33)

ご投稿ありがとうございます。
ご指摘、おっしゃる通りです。
ノストラダムスについての記述は誤解を招く内容と読めてしまいます。改訂いたします。
また、他のご要望については今後の課題と受け止め、考察していきます。
貴重なご意見ありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
(回答日時:2016/01/13 17:17:53)

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「Is There Really a Mars Effect?」
Michel Gauquelin Journal of Astrological Studies, Issue 11, Fall 1988, pp. 4-7.