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水素水

言説の一般的概念や通念の説明

語句説明

素水とは、①圧下で水素ガスを水に充填する、②マグネシウムと水、あるいはアルミニウムと酸化カルシウムと水の化学反応により水素分子を発生させて溶存する水素分子濃度を高める、③水の電気分解により生成される還元水にさらに陰極側に発生した水素分子を利用し水に溶け込ませたもの、などの方法によって生成された水素分子の濃度を高めた水を意味する[1]。

  このうち、特に③の方法によって生成された水について「活性水素水」あるいは「電解還元水」「アルカリイオン水」などと呼ばれることもある注1)。本項では、水素水の経口摂取などによるヒトへの健康効果について評定する。

  現在、社会的に水素水の健康効果として謳われている主張は多岐に渡る。たとえば、パーキンソン病や糖尿病、メタボリックシンドロームやリウマチ、ED(勃起不全)やアンチエイジング、がんへの予防効果などである注2)。こうした健康効果が広く謳われるようになったのはごく最近のことで、2012年頃からテレビや雑誌などを中心に取り上げられたことで徐々に一般に広まったとみられる[2]。関連した水素製品も開発・販売されている。

  本評定では、こうした健康効果主張の背景にある研究として、次の2件の包括的レビューに記載されている、ヒトを対象とした個々の研究文献を主に参照する[3-4]。ただしこの2件は、まとめ論文ではあるが、医学的に信頼性の高いメタ分析研究ではないことに注意されたい。また、本研究による調査では、2018年4月時点において、ヒトを対象とした水素水の健康効果に関するメタ分析研究は見つけることができていない。

1)Ichihara et al. “Beneficial biological effects and the underlying mechanisms of molecular hydrogen–comprehensive review of 321 original article”, Medical Gas Research, 2015
2)Nicolson et al. “Clinical Effects of Hydrogen Administration: From Animal and Human Diseases to Exercise Medicine”, International Journal of Clinical Medicine, 2016

  上記1)、2)によると、2007年から2015年6月までに321件の水素水研究が報告されており、その中でヒトを対象とした研究は32件とされている。また、10人以上を対象とした研究は19件で、うちオープンラベルによる研究が9件、単盲検法による研究が1件、二重盲検法による研究は10件である(オープンラベルと二重盲検の両方を行った研究が1件ある)注3)。健康なヒトを対象とした研究は2件である。

  以上の包括的レビューをもとに、そこに記載されている元論文を科学的根拠となる研究とみなして評定を行う。なお、本評定では経口摂取によるヒトに対する健康効果といった応用的な側面(臨床研究)を重視し、げっ歯類を用いた研究や植物を用いた研究などは予備的研究とみなして評定の対象とはしない。

注1)原理的には「水素水概念」のなかに活性水素水や電解還元水の概念が含まれることになるが、実態ははっきりしない。また、電解水の生成器は家庭用管理医療機器に区分されている。
注2)たとえば、藤吉雅春「大流行「水素水」でセックスレス解消!」『週刊文春』2012,p146-149文藝春秋;「水素水「効果ゼロ」報道に異議あり!」『週刊文春』2016,p118-120文藝春秋;「水マニアが教えます!水の種類と効果・効能」http://umai-mizu.com/entry5.htmlなど。
注3)オープンラベル研究とは、被験者および試験責任者が各被験者に投与されている製剤を知っている状態で実施される試験のことをいう。

目次:

1.水素水理論は場当たり的?
理論の観点:論理性(低) 体系性(低) 普遍性(低)

2.安定した効果は得られていない
データの観点:再現性(低) 客観性(低)~(中)

3.理論と実験による効果が不一致である
理論とデータの観点:妥当性(低)~(中) 予測性(低)

4.水素水を批判すると大変だ
社会的観点:公共性(低)~(中) 歴史性(低) 応用性(低)

総評:疑似科学

理論の観点:

論理性(低)

  水素水の健康効果を支える理論的根拠は「抗酸化作用」である。抗酸化作用とは、平易にはヒトの酸化ストレスを抑える作用をいい、このような機能を有する物質を一般に「抗酸化物質」という。抗酸化物質はヒト、食品あるいはそれら以外の様々な物質に酸素が関与する有害な作用を抑制する物質の総称である注4)。

  抗酸化物質が話題を集めているのは、近年、酸化ストレスをもたらす物質である「活性酸素・フリーラジカル」と老化や疾患が強く関係しているとの科学的知見によるものである。一説には、これらが関与しない病態は存在しないとまで言われており[5]、ゆえに酸化ストレスを抑える抗酸化物質が注目されている。

  活性酸素とそれに対する抗酸化作用自体は特異な現象ではなく、生体内で日常的に起きている。しかし、たとえば多量の喫煙や排気ガスの吸入、何らかの疾病に罹患して薬剤を服用するなど要因によって身体が正常でない状況になると、活性酸素種の生成とその消去のバランスが崩れる。すると、活性酸素が過剰に存在している状態、つまり酸化ストレス状態となり、これがさまざまな悪影響を及ぼす原因とされるである。

  問題は、こうした酸化ストレス状態を改善する機能が「水素水」にあるのか、ということであるが、先に挙げた2015年6月までのヒトを対象とした研究では結果にバラツキがみられる。酸化ストレスを評価する指標はいくつか開発されている(後述)が、ヒトを対象とした水素水の研究では、酸化ストレスが改善した研究と改善していない研究とが混在しており、一貫した結果が得られていない。

  たとえば、スポーツ選手を対象とした研究[6]では、水素水によって運動後の乳酸値抑制効果があったとしている一方で、酸化ストレスを評価する指標(d-ROMs、BAP)には有意な変化がなかった。また、リウマチ患者に対するオープンラベルの研究[7]では、酸化ストレスマーカー(8-OHdG)への抑制効果があったが、別のメタボリックシンドローム患者に対する研究[8]では同じ測定指標(8-OHdG)に対して有意な変化がみられていない。


注4)抗酸化物質は多岐にわたるが、その多くは植物性の食材から得ることができる。水溶性であれば、ビタミンCや多くのポリフェノール化合物がある。他に、水溶性のアスコルビン酸、脂溶性のトコフェロールやカロテン類等もある。ヒトの場合、抗酸化物質の多くは生体内で合成することができないため食事から補給する必要がある。

体系性(低)

  抗酸化物質や抗酸化作用のヒトに対する影響は先進的な分野であり、現在盛んに研究が行われている。関連して、ヒト体内における酸化ストレスを測定するための直接的・間接的な指標もいくつか開発されている。
  たとえば、水素水研究でも用いられているd-ROMsテストは血中ヒドロペルオキシド濃度を間接的に測定する評価指標であるが、d-ROMsテスト値が基準値よりも高かった群は、正常値の群と比較して心血管系有病率と死亡率が有意に高いとの報告がある[9]。ヒト体内の酸化ストレスと疾病の関係についての知見は徐々に集積されているといえる。

  一方、水素水の健康効果に関する研究も、こうした抗酸化作用を理論的支柱としつつ評価の指標としているため、その意味では突飛な理論ではないといえる。ただし、ヒトを対象にした研究の場合、水素水における抗酸化作用については一致した見解に至っていないため、評価を割り引く必要がある。特に、水素分子がどのように体内で抗酸化作用を引き起こしているかについての作用機序が明確でないことは問題である。

普遍性(低)

  水素水研究では、対象疾患に関する一部の数値改善が効果として報告されている。ただし全般的に、測定したいくつかの指標のうちの一部のみに対する数値改善であったり、一貫した結果が得られていないといった問題がみられ、限定的な疾患のごく一部の数値改善効果が示されるに留まっている。
  また、一般に流布している「がんへの予防効果」「ED(勃起不全)に対する効果」「アンチエイジング効果」「ダイエット効果」を示すヒトを対象とした研究は報告されていない(2015年6月時点)。

  これまで報告されている研究の多くは「病気のヒト」を対象とした医学研究であるが、健康なヒトを対象にした研究に「スポーツ選手(サッカー選手10人)の筋肉疲労改善効果」がある[6]。この研究では、運動前の水素水の飲用によって疲労原因物質とされている乳酸値(lactate)抑制効果が得られているが、一方で水素水言説の理論である酸化ストレス指標(d-ROMs、BAP)には有意な変化はなかったとされている。
  また、ポジティブな効果として述べられている乳酸値抑制についても、近年のスポーツ科学分野において「乳酸で疲労する」という知見自体に懐疑的な見解があることもあり[10]、一義的に「効果があった」と言い切れない実態がある。

  抗酸化作用について同一の測定指標を用いても結果が出るものと出ないものがあり、ヒトに対する効果を支える理論の不確かさがうかがえる。このまま理論が複雑化していくと「リウマチの場合には酸化ストレスマーカーが下がるがメタボの場合には下がらない……」といった繰り返しとなり、後づけの理論補強がいくらでも可能になってしまうため科学的とはいえない。
  以上より、普遍性は低評価とする。

データの観点:

  

再現性(低)

  再現性評価の前提として、語句説明にて挙げた水素水の包括的研究 [3-4] をもとに、10人以上のヒトを対象とした水素水研究(19報)のおおまかな概要を以下に示す(2015年6月時点)。

ヒト対象の水素水研究(10人以上の被験者)

対象(※水素水以外での利用) 主な測定項目 実施年度 被験者数 実験形式
メタボリックシンドローム患者 酸化ストレス評価値やコレステロール値など 2010年 20人 オープンラベル
慢性腎不全患者(※水素利用の人工透析) 酸化ストレス評価値 2010年 29人 オープンラベル
肝腫瘍患者 QOLスコア注5) 2011年 49人 オープンラベル
ミオパチー患者注6) 生理指標(乳酸値など) 2011年 31人 オープン/二重盲検
リウマチ症患者 活動性評価(DAS28) 2012年 20人 オープンラベル
脂質異常症患者 コレステロール値など 2013年 20人 オープンラベル
圧迫性皮膚潰瘍患者 創傷サイズや回復期間 2013年 22人 オープンラベル
紫外線皮膚損傷患者(※水素ガスによる効果) いくつかの生理指標 2013年 28人 オープンラベル
脳虚血患者(※静脈内注入) 酸化ストレス評価値 2013年 38人 オープンラベル
軟部組織損傷患者(※水素が豊富な錠剤) 回復期間や血液粘稠度 2014年 36人 単盲検法
二型糖尿病患者 コレステロール値など 2008年 30人 二重盲検法
健康な男性スポーツ選手 筋肉疲労や酸化ストレス評価値 2012年 10人 二重盲検法
パーキンソン病患者 病態評価(UPDRS) 2013年 17人 二重盲検法
間質性膀胱炎患者 ※有意な治療効果なし 2013年 30人 二重盲検法
リウマチ症患者(※静脈内注入) 活動性評価(DAS28)や酸化ストレス評価値 2014年 24人 二重盲検法
健康なボランティア 血管内皮機能 2014年 34人 二重盲検法
代謝性アシドーシス患者 血中アルカリ度 2014年 52人 二重盲検法
慢性B型肝炎患者 酸化ストレス評価値 2014年 60人 二重盲検法
脂質異常症患者 コレステロール値など 2015年 68人 二重盲検法

  まず、これまで報告されているヒトを対象とした水素水研究の多くは、特定疾患に対する限定的な数値改善であることが指摘できる。上記の研究の中で「健康なヒト」を対象とした研究は2報である。
  たとえば、上記の二型糖尿病患者に対する研究では、sdLDLコレステロール値に有意な減少効果がみられているが注7)、LDL/HDLコレステロール値全体には変化がなかったとしている[11]。
  また、肝腫瘍患者に対する研究[12]ではQOLスコアの改善がみられたとしているが、統計処理をしているとはいえ、オープンラベルでの研究ということから推定すると事実上かなり主観に頼った指標であると思われ、「何に対して効果があったのか」が明確でないことが指摘できる。

  個々の研究同士で一貫した結果が得られていないことも問題である注8)。論理性の項目で述べたように、研究によって同一の指標に対する効果があったり/なかったりするため、再現性を高く評価することはできない。そもそも研究数自体が少なく追試もほとんどないため、全般的に再現性がきちんと担保されているともいえない。

  さらに、上記のメタボリックシンドローム患者を対象としたオープンラベルの研究では、一日当たり1.5リットル~2リットルの水素水を飲用させた8週間の実験期間の間に、何種類かの軽度の有害事象が65%の被験者にみられている。腹痛、頭痛、胸やけ、下痢など軽度の症状であるが、当該研究ではこれらの症状と試験物質を関連付けることが“可能である”としている。

  以上から、ヒトを対象とした水素水研究の効果の再現性は低評価とする。また、これまで報告されている研究はほとんどすべて医学研究として厳密にコントロールされたものであり、市販の缶入り水素水などに対する効果を担保するものではないこともあえて付しておく。


注5)この研究では、EORTC(European Organization for Re−search and Treatment of Cancer)QLQ-C30が評価スコアとして用いられている。「長い距離を歩くことに支障がありますか?」「痛みがありましたか?」など、日常生活における健康状態に関する質問に対して自己申告にて記入する。
注6)ミオパチーとは、筋肉の病気のうち、筋自身に原因がある疾患の総称である。この研究では、「炎症性ミオパチー」および「ミトコンドリアミオパチー」患者が対象となっている。
注7)sdLDLコレステロールとは、small,dense,LDLコレステロールの略である。sdLDLは冠動脈疾患と強く関連しており、「超悪玉コレステロール」というニックネームで呼ばれることもある。
注8)データが一貫しない背景として、多重比較への補正が十分でない可能性が考えられる。実際、上記研究においても補正に関する記述がなかったものがいくつかみられる。

客観性(低)~(中)

  ヒトを対象とした研究のうち、(サンプル数が多くなく、対象疾患もバラバラであるとはいえ)RCTかつ二重盲検法で行われた10件の研究の客観性は高い(2015年6月時点)。それ以外のオープンラベルでの研究も、基本的に医学研究としての実験プロトコルに則っており評価できる。

  しかし、ヒトを対象とした研究数やサンプル数、追試が少ないことが問題視されており注9)、たとえば「ごく一般的な健康な人が、市販の水素水を恒常的に飲用した場合」のデータなどはほとんど不明である。少なくとも、上に挙げた19件の研究以外のヒトに対するデータの客観性は担保されていないといってよい。


注9)たとえば、松永和紀「水素水、「ニセ科学」と切り捨ててはいけないが、エビデンスありとは言い難い」FOOCOM.NET2016(http://www.foocom.net/column/editor/14366/)や、山形大学理学部物質生命化学科天羽研究室「水素水の宣伝をニセ科学と呼ぶしかない理由(2016/02/20)」(http://www.cml-office.org/wwatch/alkalli/comment-ph-08)などに詳しい

理論とデータの観点:

妥当性(低)~(中)

  RCTや二重盲検法にてデータ収集が行われている研究の妥当性は基本的には高い。しかし、水素水研究では何が測定されているかという意味をつかむことが難しい。特に、追試が少ないため本当に妥当なデータであるかどうか断定できないことは問題である。
  水素水によって「特定疾患に対する何らかの数値改善がみられた」という共通項はみられるものの、効能に対応したデータ収集がなされておらず、作用機序が不明であるため妥当性に疑問が残る。

予測性(低)

  水素水による健康効果の理論的支柱は抗酸化作用である。しかし、酸化ストレスが軽減した研究と効果がなかった研究が混在しており、理論とデータが不一致であることがうかがえる。
  抗酸化作用を理論的背景とするのであれば「どのような対象が、どのくらいの水素水を飲用した場合、どの程度の抗酸化作用があるか」が問題となるが、現状、こうした予測性は低いといえる。

社会的観点:

公共性(低)~(中)

  ヒトを対象とした研究の個々の論文は専門誌の査読を経ているため公共的である(公共性が高い)といえる。しかし、問題を「水素水業界」でとらえた場合、公共性に疑問が残る。
  たとえば、水素水の健康効果について否定的な見解をとる研究者個人に対して、水素水関連団体からの抗議文や内容証明郵便が送られてくるといった問題がみられている注10)。原則的には、独立した精神と自由な発想が研究者個人には保障されるべきであり、こうした抗議文は科学の基本精神を委縮させ公共性を損ねているといえる。


注10)samakikakuの今日もワハハ「分子状水素臨床工学研究会から抗議文書が来た!」(http://d.hatena.ne.jp/samakita/20160609/p1)やtogetter「いま注目の水素水商法!(消費者行政・適格消費者団体的に)」(https://togetter.com/li/982039)を参照されたい。

歴史性(低)

  水素水研究が活発になったのはごく最近のことである。2007年、有名な科学誌「ネイチャー」に発表された論文がそのきっかけとみられている[3]。また、ヒトに対する健康効果が一般に広まり始めたのは2012年頃からであり、ワイドショーや週刊誌にて紹介されたことが始まりである。   

  水素水の健康効果について懐疑的にみる向きが表面化したのは2016年5月頃だと思われる。具体的には、産経ニュース(5月14日)にて水素水効果に批判的な記事[13]が書かれたことがきっかけであると推定される。このニュースはすぐにネット上で話題となり、先の産経ニュースに類似した内容の記事もいくつか発表された。

  また、国立健康栄養研究所が発表した「有効性に信頼できる十分なデータが見当たらない」との情報は大きな契機となった(6月20日)。この情報はすぐに報じられ、これによって健康効果の論争に一つの区切りがついたとの見方も出てきた[14-15]。

  科学的な議論における水素水の健康効果については現在も議論が進行しているが、その歴史は浅い。また、健康効果については(現在は)懐疑的な見方が大勢を占めていると分析できる。

応用性(低)

  これまで医学研究として報告されている水素水の健康効果は、特定の疾患に対する限定的な改善効果である。「ごく一般的な健康なヒト」が飲用した場合にどのような効果があるかはほとんど明らかになっていない。

  また、仮に水素に健康効果があったとしても、「水素水」の形式で飲用することのメリットは薄いように思われる。たとえば、「水素生産菌」を利用した製品[16]のように、体内の菌類を活用するほうが理屈として理にかなっており、水に溶けにくい水素をわざわざ「水素水」として取り入れる積極的な理由を見出せない。

  関連して、市販されている水素水商品のいくつかでは、「水素水」と表示されているにもかかわらず水素が検出されないといった問題が指摘されている[17]。水素分子は小さくて軽く、ペットボトルのような保存法では濃度が一定に保てないという原理的な欠陥も指摘でき、応用性を高く評価できる材料はない。

総評:

疑似科学

素水の効果を医学的に研究する試みは現在も行われており、個々の研究自体は疑似科学とはいえない。ただし、ヒトに対しての具体的な効果・効能は確立されておらず、データ不足であることが懸念される。特に、水素水の理論的支柱である抗酸化作用については懐疑的にならざるを得ず、この段階で「○○という効果がある」と主張することは難しいだろう。

  現在、医学研究の検索エンジン(PubMed)等において、ヒトを対象とした経口摂取における水素水効果の論文を検索すると、ヒットするのはほんの20件~30件程度である注11)。

  一概に論文量の問題ではないが、①特定の疾患の患者を対象とした研究ばかりであること、②得られているデータが限定的な効果に留まっていること、③追試がほとんどみられないこと、④一貫した結果が得られていないことなどは明確な問題であるといえる。
  医学的な“研究対象”としての水素水研究は否定しないが、過度な健康効果を標榜するような商品・言説が問題化している社会状況[18]を鑑みて、本項では疑似科学と評定する。


注11)2017年10月10日時点。

参考文献:

  • [1]国立健康栄養研究所「健康食品の安全性・有効性情報「水素水」」http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail3259.html
  • [2]山本輝太郎・石川幹人「水素水関連言説における科学コミュニケーションの実態~疑似科学とされるものの科学性評定サイトを媒介して」科学技術社会論学会年次学術大会2016
  • [3]Nicolson et al. “Clinical Effects of Hydrogen Administration: From Animal and Human Diseases to Exercise Medicine”, International Journal of Clinical Medicine, 2016
  • [4]Ichihara et al. “Beneficial biological effects and the underlying mechanisms of molecular hydrogen–comprehensive review of 321 original article”, Medical Gas Research, 2015
  • [5]関泰一「d-ROMSテストによる酸化ストレス総合評価」『生物試料分析』2009
  • [6]Aoki et al. Pilot study: Effects of drinking hydrogen-rich water on muscle fatigue caused by acute exercise in elite athletes, Medical Gas Research, 2012
  • [7]Ishibashi et al. Consumption of water containing a high concentration of molecular hydrogen reduces oxidative stress and disease activity in patients with rheumatoid arthritis: an open-label pilot study, Medical Gas Research, 2012
  • [8]Nakao et al. Effectiveness of Hydrogen Rich Water on Antioxidant Status of Subjects with Potential Metabolic Syndrome – An Open Label Pilot Study, J. Clin. Biochem. Nutr, 2010
  • [9]Vassalle et al. Elevated hydroperoxide levels as a prognostic predictor of mortality in a cohort of patients with cardiovascular disease, Int. J. Cardiol., 2005
  • [10]谷健太、片平誠人「クールダウンの生理学的効果に関する文献的考察」『福岡教育大学紀要』2012
  • [11]Kajiyama et al. Supplementation of hydrogen-rich water improves lipid and glucose metabolism in patients with type 2 diabetes or impaired glucose tolerance, Nutrition Research, 2008
  • [12]Kang et al. Effects of drinking hydrogen-rich water on the quality of life of patients treated with radiotherapy for liver tumors, Medical Gas Research, 2011
  • [13]平沢裕子「美容、ダイエットと何かと話題の「水素水」実はかつてブームを巻き起こした「あの水」と同じだった…」産経ニュース2016(http://www.sankei.com/life/news/160514/lif1605140008-n1.html)
  • [14]産経ニュース「有効性に信頼できる十分なデータが見当たらない 国立健康・栄養研究所が見解」2016(http://www.sankei.com/life/news/160617/lif1606170023-n1.html)
  • [15]J-CASTニュース「水素水に「有効データ見当たらない」 国立研究所「発表」が論争にピリオド?」2016(https://www.j-cast.com/2016/06/22270406.html?p=all)
  • [16]協同乳業「ミルクde水素」(https://www.meito.co.jp/milkdesuiso/)
  • [17]J-CASTニュース「水素水「やっぱりただの水」国民生活センター調査の唖然」2016(https://www.j-cast.com/2016/12/16286330.html?p=all)
  • [18]深笛義也「水素水に国が「効果なし」警告、業界が一斉反発で異例バトル「テストに疑義」「言語道断」」Business Journal, 2017(http://biz-journal.jp/2017/03/post_18343_3.html)

情報提供、コメント、質問を歓迎します。

(最終更新日時2018年10月5日)

投稿

投稿&回答

水素水の効果を評価するにはまず人間という生体を対象とするという点で、条件をそろえることが難しいと思います。

また水素水自体微量の水素しか含んでいないため、被験者の生活環境が自ずと不足量を補う水素を摂取できているとかまたはその逆であるか。その被験者が外部からの水素分子を摂取する必要があるか否か。体内外の他物質との相互作用などもあるでしょう。
被験者の生活環境が様々:生活のパターン、住環境、食環境、被験者の体質も考慮する必要があります。

そういった観点から、条件をできるだけそろえられる動物実験から始めると同時に、多くの体験者の主観的な感想を収集、分析すること位のアプローチしかできないのでは無いかと思います。
伝統的な発酵食品なども生きたままの物を(瓶に詰めてずっと経った物で無く、漬け物桶から出したばかりのような物)水素含有量など調べてみると何かあるかもしれません。
大気中にもいくらかある様ですし、その影響もあるかもしれません。

万人にあらゆることに常に効くような物で無く、試してみて良いと感じられたら使ってもよいくらいの物としておくしかできないのでは無いかと思います。 (投稿者:Apu,投稿日時:2018/09/14 18:00:08)

ご投稿ありがとうございます。
>水素水の効果を評価するにはまず人間という生体を対象とするという点で、条件をそろえることが難しいと思います。
――RCT(ランダム化比較対照試験)がなぜ重要かというと、こうした統制できない条件を統計的に相殺するためなのです。被験者をランダムに実験群と統制群に割り当てることで、「揃えることのできない条件」をキャンセルします。
>そういった観点から、条件をできるだけそろえられる動物実験から始めると同時に、多くの体験者の主観的な感想を収集、分析すること位のアプローチしかできないのでは無いかと思います。
――ラットに効いたからと言って人間に効くわけではない、ということは非常によくあります。ヒトでのRCT(二重盲検)がやはり一番よいと思います。
(回答日時:2018/09/17 20:44:20)

論考の前提として、水素水の飲用における「酸化ストレスを抑える抗酸化作用」とありますが、ニック・レーンの『生命、エネルギー、進化』のフリーラジカル老化説には、「フリーラジカルはATP合性を増やすシグナル」と書いてあり、そもそも酸化ストレス=悪という図式を疑ってかかる必要があるのではないでしょうか。
(投稿者:PEC,投稿日時:2018/09/09 10:45:51)

ご投稿ありがとうございます。
>酸化ストレス=悪という図式を疑ってかかる必要がある
――ご指摘に同意いたします。その通りですよね。というか、少なくとも単純な「善・悪」という図式ではないと思います。
(回答日時:2018/09/17 20:47:33)

日本トリムのユウザーで、英語も科学もパソコンにも弱い70歳を過ぎた老人が、この前の回答に理屈をこねます。是非、この老人を納得させて下さい。まずこの前の回答に驚き、ガックリしました。。"いまある研究結果から判断をせざるをえない。”と云う文章は何とも陳腐過ぎます。先見性とか洞察力は感じられません。判断せざるをえないとは何か理由があるのでしょうか。もう少し研究結果が出るまで判断を保留すれば良いのではないのでしょうか。私は水素に効果があるとは言っていません。効果を調べる臨床試験の仕方に意味がないと言っています。このサイトでヒトが水素水を経口摂取してのやり方では効果があったとしても、バラツキがあり再現はできないと考えます。健康な人での臨床データでは充分に体内で水素が産生されていて、もう水素が必要でない状態で有れば、何も効果は臨床データに現れないと考えます。例えが適当かどうか分かりませんが、ビタミンCについて考えてみました。人はビタミンCは体内で合成出来ませんが、合成出来る動物にビタミンCを経口摂取させて臨床試験をしているのと同じ事じゃないでしょうか。”ビタミンCを合成できる動物にビタミンCを摂取させてエビデンスをとる”。”水素を体内で産生している動物(ひと)に水素水を経口摂取して臨床データをとる”。この状況は私はおかしいと考えます。今迄の研究成果は意味がないと判断します。そのデータを基にして判断をしてはいけないのじゃないでしょうか。ビタミンCの慢性的な不足から発症する壊血病は、壊血病が先にあって柑橘類、野菜等が発症を抑える事が解り、それらに含まれる物質が、後にビタミンCだと発見されたと私は理解してます。水素の慢性的な不足もその様な可能性が在るかもしれないと思います。水素の慢性的な不足が動脈硬化と関係しているとしましょう。ビタミンCでは壊血病です。水素の不足で起きる症状を想像して少し長期に経口摂取での水素水の臨床データを採るのも一つの方法では無いでしょうか。体内で産生されている水素が体内で何か働きをしているか、未だ現状では判断出来ないと考えています。解るような分析装置でも開発されればと思います。このサイトでは水素水に含まれる水素と、”体内で産生されている水素を別個に考えるべき必要がある”と回答では書いておられますが、水素の物性は同じですので同意出来ません。量の問題はあるでしょうが。このサイトでは経口摂取での水素水は、効果、体への働きは無いと評定されていますが、体内で産生されている水素も、空気中の窒素と同様、働きは無いと考えておられるのでしょうか。水素水が疑似科学と評定できる場合は体内で産生される水素の働きが無いと解明された場合のみでしょう。お伺いします。それに、評定された臨床データを出した科学者たちは、体内で水素が産生されている事を知っていたのでしょうか。これについてこのサイトの方は、科学者が知っているか否かご存知だったのでしょうか。それにこのサイトの方も評定を出す時に体内で水素が産生されているのはご存知だったのでしょうか。知っていたが考慮をされなかったのでしょうか。考慮する必要は無いと考えられたのでしょうか。教えて頂きたく思います。
もう少し書きます。水素水の定義にも疑問があります。水の中の水素ガスだけを調べる事と、ここでおっしゃられる応用的に販売されている水素水、電解水素水そのものを調べることとは同じじゃないと思います。トリムの整水器をつかって東京大学と九州大学との共同研究結果が2017年2月に東京大学よりPLOSONEに掲載されました。ヒトの細胞を使って細胞内活性酸素除去能力調べています。このサイトの水素水の分類では(1)と(3)に当たります。水素濃度が同じでは、活性酸素除去能力は電解水素水の方が5倍あり、水素が抜けた後の水では(1)では抗酸化活性は無くなったが(3)では60%の活性酸素除去能力が残った。電極板のPTがコロイド状に含有し、白金の抗酸化力が関係しているのではとの発表だと思います。バブリングの水素水と電解水素水は違うと云ふ事でした。応用的に評定を出すのでしたらこの様な事も含めて判断が必要じゃないでしょうか。一つにまとめてしまうのは無理があると思います。この事も含めて水素水の件は、二重に被っている事が解りにくくしているのだと思います。電解水素水には抗酸化力のある水素とコロイド状白金が同時に含んでいる。ヒトの経口摂取での水素水の臨床データにも体内で産生される水素と、水素水の含有水素が二重に被っている。ここをしっかりと検討すべきじゃないでしょうか。70のおじんの戯言です。疲れました。もう置きます。
(投稿者:mizudaisuki,投稿日時:2018/09/08 05:25:09)

ご投稿ありがとうございます。
これまでのご投稿から、mizudaisukiさんのご意見をおおまかに解釈したのですが、以下の感じで正しいでしょうか?もし誤っていたらご指摘ください。

1:体内で産出される水素量(?)が足りている人と足りていない人がいる
2:体内の水素量が足りないことによって、心身に何らかの悪影響(症状)が及ぼされる
3:そのうち、足りていない人の水素は水素水の経口摂取で代替できる(足りている人には意味がない)
4:これまでの臨床研究の多くは足りている人を対象にしているのではないか?

これを踏まえていくつかあるのですが、まず、上記1、2、3に関して
>健康な人での臨床データでは充分に体内で水素が産生されていて、もう水素が必要でない状態で有れば、何も効果は臨床データに現れないと考えます。
――とおっしゃられておりますが、その根拠は何でしょうか。こうした仮定を用いている理由をお教えください。また、水素が体内で生成されており、水素水を飲めばその代替となる、とするのは論理飛躍であると思います。両者はまったく別のものとして捉えないといけません。
>このサイトでは経口摂取での水素水は、効果、体への働きは無いと評定されていますが、体内で産生されている水素も、空気中の窒素と同様、働きは無いと考えておられるのでしょうか。水素水が疑似科学と評定できる場合は体内で産生される水素の働きが無いと解明された場合のみ
――体内で醸成される水素分子がヒトにとって無意味であるとは申しておりません。評定冒頭に「経口摂取による効果」という主旨を述べているかと思います。また「体内で産生される水素の働きが無いと解明された場合のみ」とするのは筋違いで、「水素水の経口摂取による効果がある」ことが示される必要があります(立証責任、説明責任)。
あと、上記4に関連して
>効果を調べる臨床試験の仕方に意味がないと言っています。
――とされながら、
>トリムの整水器をつかって東京大学と九州大学との共同研究結果が2017年2月に東京大学よりPLOSONEに掲載されました。ヒトの細胞を使って細胞内活性酸素除去能力調べています。
――このようにおっしゃられるのはやや整合性に欠けると思うのですが、いかがでしょうか。この実験で用いられた細胞はたまたま「足りていない人」の細胞が使われたということでしょうか。もしくは、細胞研究では水素の過不足は問題にならず臨床研究では問題となる、ということでしょうか。だとすると、そもそもこうした細胞研究の結果の知見を紹介される意義がよくわかりません。
>判断せざるをえないとは何か理由があるのでしょうか。もう少し研究結果が出るまで判断を保留すれば
――というより、判断を保留していないのはむしろ水素水販売、開発の側だと思います。Mizudaisukiさんのおっしゃるように今の研究結果で不十分であれば、そもそも健康効果と誤認しうる表現・表示をしてはいけません。説明責任は主張する側にありますので、「効果がある」ということが先に示される必要があるのですね。

(回答日時:2018/09/17 20:49:18)

そもそも水素水とは水に水素分子を溶け込ませた水であり、電気分解水や還元水とは全く別物です。

論文を見る限り、電気分解水・還元水(以下イオン水)とイオン水に水素をさらに溶け込ませた水素水の分類があいまいすぎる気がします。
存在そのものが曖昧ですが、その効能はイオン水に含まれる活性水素であり水素分子では無いと考えます。

イオン水の歴史と水素水のなり染をもっとしっかり定義しなければ「イオン水」=「水素水」になってしまうのではないでしょうか?

まったく別物なのですが。 (投稿者:追伸 ,投稿日時:2018/07/23 04:09:51)

ご投稿ありがとうございます。
水素水の定義・分類があいまいだとのご指摘ですね。
基本的には(評定にも記載していますが)、「水素分子濃度の濃度を高めた水」でよいかと考えます。
ただ、製法については画一的ではないようです(これが分類にも関係しているのでしょうが、実態ははっきりしません)。
参考:国立健康・栄養研究所「水素水」
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail3259.html
また、うかがいたいのですが、
>イその効能はイオン水に含まれる活性水素であり
――これは、「活性水素」なる物質があるという意味でしょうか?

(回答日時:2018/08/06 13:30:20)

2018年1月10日午前10時英国科学誌Scientific reports(電子版)に東北大学から、5年間の「電解水」透析システムの臨床試験の最終結論が発表されました。経口摂取での水素水の臨床データではありませんし、水素の働きのメカニズムが解明されたわけではないと思いますが、このサイトではどの様に捉えられますか。お伺いいたします。又 前回の投稿のご回答をいただいていませんので、そちらもよろしくお願いいたします。 (投稿者:mizudaisuki,投稿日時:2018/06/10 19:36:55)

>5年間の「電解水」透析システムの臨床試験の最終結論が発表されました
――プレスリリースと論文本体をざっと読みました。当該実験は盲検法などではなくオープンラベルで行われていたようなので、このデータのみをもって効果ありとはいえないと思われます。また、この実験では複数の測定項目があるようですが、「多重検定」などの統計処理に関する記述が見当たらなかったので、そのあたりがどうなっているのかもちょっと疑問です。
(回答日時:2018/06/23 09:32:13)

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