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活性水素水・(電解還元水)

言説の一般的概念や通念の説明

語句説明

 本項目では活性水素水言説、及び電解還元水言説を評定する。本項目では例外的に二つの言説を扱うが、これは電解還元水言説と活性水素水言説が同じような概念であるようにみえることを理由としている。また、電解還元水言説を起因として、それが活性水素水言説へと移行していった経緯もあるため(これは、近年のエネルギー政策における魅力的キーワード「水素」をとり入れたのかもしれない)、本項目においてはより新しい活性水素水言説を中心としながらも、電解還元水についての説明も加えていく。
 「活性水素」とは、一般には「単原子水素」が水溶液中に浮遊しているような印象を与えているが、(少なくとも本項目では)水の電気分解の際に金属から放出される電子によって、水素が金属粒子と結合したものを指す。 また、言説である健康効果の作用秩序自体は、いわゆる「抗酸化物質」による酸化防止が大まかな骨格であり、その役割を果たすものとして「活性水素」というものを定義しているのが現在の言説の中心であると考えられる。その主なものとして、「体内で悪影響を及ぼす活性酸素を除去し、健康効果を得られる」といった広い意味のものや「生活習慣病への予防」、「アンチエイジング効果」といったものも挙げられる。
 主要な研究者である九州大学の白畑教授は、このような健康効果を電解還元水言説から再発見した(としている)のだが、それを発展させ「活性水素」なる呼称のものをも生み出した。電解還元水言説の原本は、林秀光氏によって提唱されたものであったが、白畑教授はその効果作用の秩序を「活性水素」と定義したものに求めたのである。 そういった流れから「活性酸素」の消去効果として「活性水素」なるものが想定されており、その作用によって上述のような、広い意味で健康効果が得られるとしている。
 したがって本評定では「活性水素水」(電解還元水)そのものよりも、活性水素水“言説”としての、その健康効果について、より重点を置きながら記述していく。つまり、理論性の項目(論理性、体系性、普遍性)においては「活性水素」(電解還元水)がそもそもどのようなものであるかという面も評定基準として一定の考慮はするが、その他の基準においては健康言説を中心として取り扱っていく。

効果の作用機序を説明する理論の観点

理論の論理性 (低)~(中)

 まず、そもそも「活性水素」が何を意味するものなのか、どのような手順により生成されるとしているのかを簡単に説明する。
 活性水素仮説の主要な研究者による九州大学の白畑教授によると、水を電気分解したときに発生した水素が陰極表面に付着したものを「活性水素」と指す、と定義している。これ自体は電気化学の基本的な理解の範囲内であり、『「活性水素」なる「単原子水素」が水中に存在している』といったような一般通念として思われている物とは意味の異なるものであることがいえる。また、電解還元水についての明確な定義はないが、活性酸素除去効果をもつ還元水であるというのが、活性水素水言説における拠り所として扱われているようである。
 ただし、それらを健康効果として当てはめると不明瞭な点が多い。活性水素が活性酸素に対して除去効果――つまり抗酸化作用がある――としても結局それが人間の身体にどのように作用するのか、といったことへの明確な説明はない。たとえば、「活性水素水」を飲むことによって活性酸素除去効果(体内の活性酸素と「活性水素」が結びつくこと)があるとし、それが健康効果につながるとしても、その範囲は実際に水成分の通る、口腔、食道、胃、腸に限られると考えるのが自然なのだが、「活性水素水」言説においてはあやふやな説明しかない。(このことは、電解還元水言説においても同様の指摘ができる)
 これは、抗酸化作用を謳い、健康効果につながるとしている言説全般に言えることでもあるが、対象となる疾患や「健康」状態の指標が曖昧であることも一因といえるだろう。  

理論の体系性 (中)

 活性酸素が人体において有害であり、生活習慣病などの原因の一つであるという仮説は現在多く研究が進められている分野の一つであり、まだまだ不明な点は多いが今後の応用性が待たれるものではある。
 その中で、細胞内の酵素で分解しきれなかった活性酸素が病気の原因となる、という上記の前述の前提に基づくと、還元作用があるとしている電解還元水、あるいは活性水素水を人体に取り込むという理論は現代科学の体系性から著しく逸脱している理論ではない。
  ただし、活性水素水に活性酸素への消去効果があったとしても(それ自体にも議論がある)、そもそも活性酸素と人体の健康の関係性についての議論が整っておらず、過度な健康効果言説(生活習慣病に「効く」や「がんの予防作用」など)における理論の根拠はまだまだ乏しいといえる。

理論の普遍性 (低)

 活性酸素における研究が進み、活性水素水研究においてもその抗酸化機能が信頼できるデータの蓄積や客観性において認められれば、万人に対して普遍性のある理論となりうるが、現状ではどちらの研究も検証不足だと評価せざるを得ない。
 また、活性酸素が人体に「どの程度」有害で、還元することによって「どの程度」健康効果があるのかという理論が確立されなければ、活性水素水の健康有効性言説の補強にはつながらない。前述の白畑教授の研究も「活性水素水を生成する」という基礎研究の段階であり、ヒトを使った臨床試験にはまだまだ程遠い。
 現在の活性水素水研究では、活性水素を生成しているとするデータの再現性や対象、つまり特定疾患への罹患率などへの特定化がなされていないため普遍性も低いと評価する。
 さらに、サプリメント全般の特徴として、“万人に効果がある”という普遍性の高くなるような“装い”を“まず初めに主張している”という問題点も挙げられる。多くのサプリメントでは、医学的には“未病”か、むしろ“健康状態”の人をその対象の大部分としており、「実は必要なかった」ケースをも初めから含んだ状態で言説が展開されている。こうした普遍性を装っている(ようにみえる)現状において、評定も低評価とするほかない。

実証的効果を示すデータの観点

データの再現性 (低)

 まず、「活性水素」それ自体の検出について述べる。「活性水素」の検出方法としては、「水素ラジカルの検出方法及び定量分析方法」(公開特許公報P2002-35420A)にて検出できるとしている。この技術自体は水の電気分解によって「活性水素」(金属粒子が電子を放出して水素と結合したもの)が生成されるとしたものであり公開されているデータでもあるため、そういう意味では再現性は高いと評価できる。ただし、“公開特許”という表記には注意が必要で、これ自体は製造特許にすぎず、効果を実証する意義をもたないものであることを追記しておく。
 しかし、これが活性水素水“言説”となると、健康効果についての臨床研究はおろか、「活性水素」が直接的に人体内で活性酸素を除去したかどうかについても明確な研究データは得られていないのが実情だ。“健康効果がある”として販売している水においても、その根拠をたどることは困難である。活性水素水言説では、電解還元水における健康効果にそれを依拠している節があるが、そもそも電解還元水自体の健康効果を裏付けるデータもないといってよい。
 つまり、「活性水素」それ自体と、「活性水素水言説」を結びつけるデータはなく、その根拠となっている電解還元水における健康言説自体に疑いがもたれる。
 ヒトでの臨床試験はおろか、動物実験も行われていない状態で「健康効果」言説が流布されていると考えられ、そういう意味で再現性は低評価とする。

データの客観性 (低)

 活性水素水言説において客観性が保たれ、信頼のおける研究が行われている形跡はない。 再三述べてきたが、「活性水素」とされるものを検出する技術自体はあるが、そのことと「健康効果」があることとは区別して考える必要性があるということをまず強調しておく。
 医学的な健康有効性を主張する場合、二重盲検法や疫学的試験、あるいは症例対象研究などの臨床試験が行われていることが前提となるが、そのような研究報告はみられないのが本言説の実情である。
 発表されている研究論文は「活性水素」の定義とその検出方法であり、これら自体には疑問点はほとんどないのだが、ヒトへの「健康効果」についての具体的な研究成果と呼べるものはないといってよい。

データと理論の双方からの観点

データ収集の理論的妥当性 (低)

 再三述べているが、「活性水素」それ自体を検出するという科学的、技術的ステップはクリアしているが、「活性水素言説」と結びつくデータは収集されていないといってよい。少なくとも統計的に有意な差のある定量的に測定されたデータだとか、医学的なエビデンスに基づいた症例対象研究といったものからは「活性水素水言説」の妥当性は保証されていない。ヒトにおける健康効果のデータとされているものは「個人の感想」や“販売者の推測”がほとんどであり、妥当なデータが収集されているとは言い難い。

理論によるデータ予測性 (低)

 抗酸化物質の人体への影響(健康効果)については、まだ議論の最中であるとはいえ概ね好意的な見解ではある。また、「活性水素」の検出自体も(試験管レベルでは)安定してできるとしているため、基礎研究としての土台は整っているといえる。
 しかし、活性水素と活性酸素の作用関係、ひいてはそれが人体のどの部分にどれほど影響を及ぼすのかという応用的側面については現在までのところ不明瞭である。 予測性とは、どのような対象(ヒト)がどのくらい飲んで、そしてそれがどういう効果をもたらすかについて繰り返し検証できるかどうかを推し測る指標であり、そういう意味で、対象疾患が不特定であり、対象者も不明瞭な本言説ではこれを高評価とすることは到底できない。
 よって、予測性は低評価とするのが妥当だろう。

社会的観点

社会での公共性 (低)

 活性水素水言説においては、「活性水素それ自体の研究」と「活性水素が人に及ぼす影響」の意味が混同されている。そのため、本来ならば基礎研究の段階である「活性水素」が「健康効果のある活性水素水」として一般に広まっており、現在、そういったことに対応する統合的な研究機関などはないといえる。
 主要な研究者が積極的に健康言説を広めているというわけでもないのだが、「活性水素」という名称やその理論の作用秩序などから、商業的、経済的な意味として活性水素水言説が利用されていると考えてよいだろう。

議論の歴史性 (低)

 「活性水素水言説」において、その言説の作用範囲・効果などが社会において活発に議論されてきたという形跡は見当たらない。そもそも「活性水素水言説」に注目が集まったこと自体が極めて近年のことであり、単純な歴史も浅い。さらにその歴史の中においても、既にある批判・指摘などに対し「活性水素水言説」側(主に商業団体)が真摯に受け答えしているとは言い難く、そういう意味で歴史性は低評価とする。

社会への応用性 (低)

 公共性の項目でも述べたが、活性水素水言説は商業的、経済的に利用価値が高く「活性水素」というネーミングを用いている商品も多い。また、活性水素水言説の理論においても(主に科学側が)その説明を簡略化しすぎ、あたかも既に健康効果が確かめられていると誤解させるような文脈もみられる。さらに、活性水素水言説においては、その健康効果を電解還元水言説に求めているが、電解還元水言説自体諸説入り混じっており、特に健康効果については疑いのある言説である。 科学と社会とのコミュニケーションを考えるにおいて、上述のようなことは非常に頭の痛い問題であり、なにも活性水素水言説のみにみられる兆候でもない。
 ただ、繰り返しになるが、活性水素水言説においては活性水素の「基礎的研究」から「実用的、応用的研究」へ至るプロセスがバッサリと省略されており、それが意図的とも見受けられることが最も重要な論点であるはずなのだが、現在のところ是正される気配はなく、ビジネスだけが先行している。 以上から、応用性も低評価とする。

総評

疑似科学

 本言説の特徴は、電解還元水や活性水素水がなにを意味し、どのような働きをもっているのかが極めてわかりにくくなっていることである。活性水素水言説が電解還元水言説への説明として機能を果たそうとしている一方で、電解還元水言説自体が何を示すのか不明瞭なまま理論が構築されていることが見受けられる。
  そもそも、活性水素水言説では「活性水素」という語句に対する誤信が一般に広まりすぎていることにその問題の端を発していることが考えられる。単原子水素が自然に独立して存在しているものが(源流的な意味での)活性水素なのではなく、水の電気分解によって検出された水素を「活性水素」と定義しているに過ぎないのだ。
 活性水素水言説では、抗酸化作用を健康効果における“大動脈”として用いているが、しかし本当にその抗酸化作用がヒトに対して効果があるのか、といったことにたいする根拠あるデータはない。前述のように、そのような健康効果を電解還元水言説に求めているが、電解還元水が特定の疾患に対して明確な効果があったという信頼できる研究は見当たらない。
 付け加えると、電解還元水については管理医療機器として製造販売許可の下りているものもある。正式名称を家庭用電解水生成器というこれには、効能、使用目的として厚生労働省告示第112号にて「胃腸症状改善のためのアルカリ性電解水の生成。一般家庭で使用すること」とある(一方で、家庭用医療機器の区分とは家庭用マッサージ器や避妊具(コンドーム)などと同カテゴリー区分であり、それには効果と同様にリスク(安全性)に対する許可(認可)という意味も含意されていることにも注意されたい)。
  活性水素水言説においては(電解還元水言説においても)、仮にヒトに対しての抗酸化作用があったとしても、そこから健康効果に結びつけるためにはまだ幾つもの段階を経る必要があり、仮説検証を繰り返し行わなければならない。
 そういう意味で、現在の活性水素水言説(電解還元水言説の一部)には行き過ぎたものもあり、商業的な側面の強すぎるものとなってしまっている。具体的な疾患への効果などは「まだよくわからない」とするのが妥当だと考える。

参考文献:

『現代医学 七つの大罪』 林秀光
『病を癒す水が日本にもあった』 体が喜ぶ水研究会
季刊『理科の探求』左巻健男 2014春号 特集 ニセ科学を斬る! P48-111
季刊『理科の探求』左巻健男 2015春号 特集 ニセ科学を斬る!リターンズ p50-109

情報提供、コメント、質問を歓迎します。

(最終更新日時2016年1月13日)

投稿

投稿&回答

ヤフーニュースにのっていましたね。電解透析水で透析をしている医療はにせ医療ととなりますね。東北大学や福島県立医科大学はにせ医療をしている事になりますが評定もこれでよろしいですか。 (投稿者:mizudaisuki,投稿日時:2016/05/20 00:01:05)

??
評定記述内に、そのような趣旨の文面はないと思うのですが……。 (回答日時:2016/05/20 12:02:53)

「活性水素水」についてはどうかと思いますが、「水素水」については一定の動物実験もなされており、科学的検討が真摯に行われていると考えます。

ところが、本サイトを引用して「水素水」はエセ科学と断定する記事がネットで出ています。

http://www.mag2.com/p/news/193980/2

このような誤解を招かない形での記載が望ましいと考えます。 (投稿者:ぱろぱろ,投稿日時:2016/05/19 09:56:20)

(回答日時:2016/05/20 12:03:18)

私は科学者ではないので 活性酸素とか活性水素については一般人並みの知識しかありませんが 日本トリムが東北大学や福島県立医大と産学共同で電解透析水で透析をしています。一度 詳しく調べて下さい。従来のRO水と違ってPH7.5溶存水素100ppb位だと思います。どんな臨床データがでているのか。差異があるのか。10病院以上でやっていると思います。それでも機序は解らないと私は思いますが (投稿者:mizudaisuki,投稿日時:2016/05/18 20:54:43)

水素水の透析への応用は存じております。
臨床データとして、ふつうの水と”何が””どのくらい”違い、”どういう効果があるのか”という研究があれば、話はわかりやすいと思うのですが……。 (回答日時:2016/05/20 12:01:42)

電解還元水 アルカリイオン水 電解水素水色々呼び方はありますが 陰極に出来た水にはOH-イオンとH2溶存水素が含まれている(多い少いはある)のが通常の水との違いでしょう。この電解水が胃腸症状の改善効果があると厚労省が認証しているが このことについてはどう考えておられるのか。疑似科学と謳われている方はこの部分も認めたく無いように私には感じます。若しくは家庭用医療機器なんて効果は大したことは無いと云う傲慢さも感じます。電解還元水全てを疑似科学とされるのでしたら科学的に反証すべきです。ある部分否定されるのでしたらキチンと分けるべきです。文面からは読み取れません。 (投稿者:mizudaisuki,投稿日時:2016/05/17 02:28:35)

(回答日時:2016/05/20 11:59:02)

電解還元水 アルカリイオン水 電解水素水色々呼び方はありますが 陰極に出来た水にはOH-イオンとH2溶存水素が含まれている(多い少いはある)のが通常の水との違いでしょう。この電解水が胃腸症状の改善効果があると厚労省が認証しているが このことについてはどう考えておられるのか。疑似科学と謳われている方はこの部分も認めたく無いように私には感じます。若しくは家庭用医療機器なんて効果は大したことは無いと云う傲慢さも感じます。電解還元水全てを疑似科学とされるのでしたら科学的に反証すべきです。ある部分否定されるのでしたらキチンと分けるべきです。文面からは読み取れません。 (投稿者:mizudaisuki,投稿日時:2016/05/17 02:19:04)

ご投稿ありがとうございます。
水素水の家庭用医療機器への応用については、総評で少し触れていますが、事実を誤認している記述ではないと思います。少なくとも、現に「認められている」ことは否定していませんが、ご指摘の通り、「効果の大きさ」については疑義を呈しています。
胃腸改善効果、と一口に言っても広すぎるので、特定疾患への効果など、わかりやすい研究成果をご提示いただければよいのですが。
(回答日時:2016/05/20 11:58:54)

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白畑教授によるエッセイ「水のこころ」
水ビジネス全般に関する疑似科学言説の検証サイト(海外サイト(英文))
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活性水素水の疑似科学的側面の解説(英文)
日本農芸化学会誌Vol.74(2000) No.9 P994-998
還元水による動物細胞の機能制御と医療への応用 白畑 實隆
連続式電解水生成器等における表現・表示の自主基準について
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