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コエンザイムQ10

言説の一般的概念や通念の説明

語句説明

 コエンザイムQ10(学名ユビキタス、もしくはユビキノン)とは、脂溶性の物質で、ヒトの体内において合成されている「ビタミン様物質(体内で生成されるという意味においてビタミンとは区別される)」である。現在までのところコエンザイムにはQ1~Q12まで見つかっているが、人体内で働くのは主にこのQ10であり、これは、酸化還元を行うシステムの一部である「補酵素の一種」であることと、いわゆる「抗酸化物質」であることを意味している。ちなみに「Q10」とは、キノンにイソプレンと呼ばれる炭素5個から成る単位が10個つながった構造であることを示している。また、コエンザイムQ10にはベンゾキノン型の酸化型とヒドロキノン型の還元型があるが、抗酸化作用を示すのは還元型の方であり、本評定内における文脈もそれに沿ったものとして評価する。
 さらに、日本においてコエンザイムQ10は、「うっ血性心不全」の治療薬として医薬品の認可を受けているが、本言説では、主に健康食品(サプリメント)として販売されているコエンザイムQ10の効果(たとえば広く謳われている「アンチエイジング」「抗酸化作用」「美容効果」など)に焦点を当てた評定を行う。

効果の作用機序を説明する理論の観点

理論の論理性 (中)

 コエンザイムQ10言説において期待されている働きは大きく二つに分けることができる。一つは体内のエネルギー単位であるATPの生産に関わる補酵素としての働き、もう一つは抗酸化作用によって“活性酸素”を除去する働きである。
 まず、補酵素としての働きから説明する。生体は生命活動を行うために常にエネルギーを獲得しなければならず、コエンザイムQ10はそのエネルギーの単位であるATP(アデノシン三リン酸)の生成に関与している。ATPは細胞中のミトコンドリアで作り出され、コエンザイムQ10は酸化分解の過程(つまり食品がエネルギーに変わっていく過程)において「潤滑油」のような働き(酸化の際に水素を受け取る小分子となる)をしていることが確認されている。
 コエンザイムQ10は体内においても生成されるのだが、40歳を過ぎたころからその生成力が衰え、加齢とともに血中濃度は減少する。するとATPの生産力も落ち、つまりはエネルギーを上手く生成できず臓器などの働きも衰えていく。
 こうした衰えを止めるために、外部から直接コエンザイムQ10を補給すればよい、というのが少々乱暴ではあるが、補酵素としてのコエンザイムQ10言説の理論の核である。ここまで、ある程度論理的な説明が整っているようにもみえるが、疑問点も挙げられている。
 まずは、消化吸収についてである。食事(外部)から摂取されたコエンザイムQ10は小腸内で吸収されたのちリンパ管を経由して血液に流れるのだが、その吸収率が低いことが指摘されている(摂取した量の60%は吸収されずに排泄されるとの指摘がある(1)(2))。つまり、サプリメントにて直接摂取したコエンザイムQ10の相応量が体内に吸収され、期待されているような働きができているのかはわかっておらず、むしろ疑問の方が大きい。 次に人体の加齢においての問題点を挙げる。確かに血中のコエンザイムQ10濃度は20歳をピークとし40歳代から減少傾向にあるのだが、それが直接的に「悪いこと」であるとは限らないということが指摘できる。つまり、コエンザイムQ10が不足したから、多くの内臓器官の働きが悪くなった、と一概にいうことはできず、加齢によって代謝が落ち、そのため単にコエンザイムQ10が必要でなくなったから生成されなくなったのではないか、あるいは他の要因とも複合的に重なった結果内臓系の働きが弱くなったのではないか、という論理も十分成り立ってしまうのである。そのため、コエンザイムQ10を適切に摂取すれば広い意味で健康効果が得られる、との主張は少々疑問である。
 コエンザイムQ10の抗酸化作用における健康言説については、補酵素としての働きの期待よりも、さらに懐疑的にならざるを得ない。
 抗酸化物質については現在も議論がまとまっておらず、どの程度の量を摂取すると「健康効果」が期待できるのか、そもそも“何に”対して作用するのかという機序もわかっていない。
 コエンザイムQ10がATPの生成には不可欠であり、強い抗酸化作用を持つことは確かであるが、それを外部から摂取した時の「人体の健康」とどのようにつながるかはまだわかっていない面の方が多いといえるだろう。よって、論理性は中程度とする。

理論の体系性 (中)

 コエンザイムQ10言説の基礎的な作用機序は基本的に医学、生物学に立脚しており体内における役割や化学構造についても既にわかっている。ただし、論理性の項目で述べたように、外部からの摂取におけるコエンザイムQ10の期待される働きについては医学的に不明瞭な部分も多く今後の研究が待たれることとなる。
 しかし、他の科学的知見と決定的に整合性が悪いわけではなく、そのような意味も考慮して体系性は中程度と評価する。

理論の普遍性 (中)

 人体内で生成されるコエンザイムQ10の働きが、サプリメントなどの摂取においても保証されるのならば普遍性は高いとできるが、現在までのところ医学的な薬効を示すような根拠はほとんどない。語句説明でも述べたように、コエンザイムQ10が「うっ血性心不全」の医薬品として日本で認可されていることは事実であるが、本来は限定した効果を対象としているため、本言説の中心的議論であるサプリメントとしての健康効果とは区別される。
 そういう意味で、コエンザイムQ10言説は「広く健康に良い」としているため一見すると普遍性が高いようにもみえるのだが、“広く健康に良い”という語句の定義が極めて不明瞭であることが言説の随所に見受けられる。特に「アンチエイジング」や「がんへの予防」「美容効果」といった謳い文句に対する理論は確立されておらず、“どのがんへの予防なのか”“アンチエイジングとは何を意味しているのか”“美容効果とは誰に対してのものなのか”といったものへの明確な定義が与えられているとは言い難い。そのため、普遍性の根拠が薄弱である。
 したがって、理論の普遍性は低評価とする。

実証的効果を示すデータの観点

データの再現性 (低)

 コエンザイムQ10と「健康効果」における有効性を示すデータは少数である。しかも、たとえばサプリメントとしてコエンザイムQ10を長期間服用した場合どのような健康効果が期待できるのかといった大規模なものはないといってよく、逆に動脈硬化などへの悪影響すら指摘されている。実際に米国心臓協会では、動脈硬化などの心血管の予防や治療においてコエンザイムQ10を推奨しておらず(3)(4)、久留米大学第3内科学の松岡秀洋助教授らも、血管動脈硬化の進展に伴いコエンザイムQ10がむしろ過剰になる可能性が示された研究を報告し、抗酸化物質の蓄積性に着目しながらその危険性を警告している(5)。
 さらに、現在コエンザイムQ10の医薬品における一日の摂取量は30mgが上限となっているが、サプリメントなどの健康食品ではそれを遥かに超える量が摂取可能となっており、実際、多量摂取による健康被害(胃腸症状、下痢、悪心等)など(6)も報告されている。
 以上において、コエンザイムQ10の「健康有効性」が認められる適切な摂取量はまだわかっていないと推定できる。そのため、再現性も低いと評価する。報告されているものはいずれも実験室レベルの基礎的段階のものであり、ヒトに対する効果を保証するものはないと思われる。

データの客観性 (中)

 たとえば日本コエンザイムQ協会では、コエンザイムQ10における肯定的な研究が報告されているが(7)、大規模な無作為化試験比較試験では有効性のある結果は得られていない。
 たとえば、特定の疾患(心疾患、血圧)に対する効果においてはメタ分析が行われている研究もあり、その意味では客観性を評価できる。他にも、マウスなどを用いた実験においては肯定的な報告もあるが、少なくともヒトにおいて「広い意味で健康効果が得られた」という信頼のおける報告はなく、効果があったとしているものにおいては「個人の感想」といった形態から抜け出していないものがほとんどである。
 以上より、当初医薬品としての評価は得られていたが、健康食品としてのコエンザイムQ10のデータの客観性は低いままであることがわかる。

データと理論の双方からの観点

データ収集の理論的妥当性 (低)

 「健康効果」という点において、妥当性の高いデータは収集されていない。多くの実験ではコエンザイムQ10の作用を確認するものが行われているものの、たとえば「がんへの予防作用がある」などという広く範囲をとる主張を確かめるための妥当な実験が行われた形跡はない。同様に、コエンザイムQ10には「抗酸化作用」があることは確認されているものの、それと人体への健康効果を繋げる妥当な報告は現在までのところない。

理論によるデータ予測性 (低)

 サプリメントとしてのコエンザイムQ10における、ヒトに対する適切な摂取量について一致した理論が得られていない現状において(8)、予測性は低いと評価するよりない。

社会的観点

社会での公共性 (低)

 健康食品(サプリメント)全般に言えることだが、このような業界では多くの情報が氾濫しており、その中から信頼性の高いものを見つけ出すのは容易ではない。また、たとえば日本コエンザイムQ協会といった団体があるものの、こうした協会においても「個人の感想」のようなものを研究報告レベルのものとして流布している実態があり、公共性の高い団体とはいえない(7)。
 また、特にコエンザイムQ10においては、医薬品としてのみ扱われていたときとは違い、現在では食品区分のため一般消費者が誰でも購入できるため、主に営利目的としての情報によって様々な解釈が林立していることも公共性を低くしている原因の一つだろう。

議論の歴史性 (低)

 コエンザイムQ10それ自体は1957年に米国にて発見されている。また、医薬品としてのコエンザイムQ10においても1960年代から議論が進められており、日本において医薬品認可が下りたのが1973年、その後も「うっ血性心不全」の治療薬としての議論は行われている(ちなみに、現在の医療現場で「うっ血性心不全」の治療薬としてコエンザイムQ10が用いられることはほとんどなく、むしろこのような歴史的な議論の中で、効果がないのではないかという位置づけですらある)。
 しかし、健康食品としてのコエンザイムQ10は、医薬品としての使用実績から安全性が担保されるという推測により2001年に日本で食品区分になった。それから議論が始まったこともあり、歴史性を高く評価できるものではない。
 また、食品区分となってからは、科学的な議論よりもむしろ商業的、営利的な目的が先行していることが見受けられ、健康効果に否定的な報告を肯定派が受け止めていないということも推察される。

社会への応用性 (中)

 コエンザイムQ10言説において最もよく見かける主張の一つに「美容効果」が挙げられるが、現在のところ美容効果について保証できる(再現性の高い)研究報告はない(2)。また、コエンザイムQ10の強い抗酸化作用は確認されているが、それが人体内でどのような働きをするのかについてはまだ不明瞭な部分が多く、少なくとも「がんの予防」という段階ではないことは明らかである。応用性の評定として唯一肯定的に受け止められることができるのは心疾患に対する効果であるが、それについても適切な摂取量が定められておらず、社会で応用されているとは言い難い。つまり、期待のわりに十分な比較実験が行われているとはいえないのが実情である。
 ただし、たとえば食品メーカーなどに研究の余裕がないのなら政府主導で行うという方針もあり、そのような期待値も込めて応用性は中と評価する。

総評

未科学

 現在あるような社会的な影響(主に商業目的のもの)を無視すれば、コエンザイムQ10の人体への影響についての言説は疑似科学と断定できるほどのものではなく、むしろ今後の研究成果次第であることが伺える。ただし、現在市販されているサプリメントの謳い文句についてはほとんどが確認されていないといってよく、そういう意味での科学性と社会の中での位置づけには乖離が見られる。
 コエンザイムQ10における健康言説はまだ実験室レベルの基礎的段階である、というのが実態であるが、にもかかわらず他のサプリメントの多くと同様に、ヒトに対する効果が十分に確かめられないまま社会へ送り出されているという状況が多く見受けられる。このような研究体制には懐疑的な視線を送らずにはいられないが、コエンザイムQ10それ自体の働きから飛躍した言説だともいえず、総評は未科学に留める。
 ただし、繰り返しになるが「美容効果」「がんへの予防」といった言説に対しての効果は一切確認されていない。コエンザイムQ10言説における最大の問題点は、こうした広い意味としての健康効果を謳っていることにあるだろう。
 したがって、未科学であるという総評には、基礎的研究の段階においては科学性を評価できる面もあるといった意味を強く込めていることは付しておく。

参考文献:

(1) Lucker PW, Wetzelsberger N, Hennings G, et al. Pharmacokinetics of coenzyme ubidecarenone in healthy volunteers. In: Folkers K, Yamamura Y, eds. Biomedical and clinical aspects of coenzyme Q, vol. 4. Amsterdam: Elsevier Science Publishers, 1984:143-51
(2)http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail677.html 国立健康・栄養研究所 「コエンザイムQ10について」
(3)『化学物質はなぜ嫌われるのか 「化学物質」のニュースを読み解く』佐藤健太郎/著 技術評論社
(4) http://www.heart.org/HEARTORG/ American Heart Association(米国心臓病学会)
(5) https://kaken.nii.ac.jp/d/p/15590782.ja.html「動脈硬化発症機序としての血管ミトコンドリア異常」 松岡秀洋
(6) http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/044100766j.pdf「コエンザイムQ10 の関与が疑われた薬剤性肺炎の1 例」 西野正人・宇佐神雅樹・杉村悟・吉﨑振起 日呼吸会誌44(10),2006.
(7) http://www.coenzymeq-jp.com/coq.html 日本コエンザイムQ協会
(8) http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/08/h0822-1.html 厚生労働省 コエンザイムQ10の安全性に関する食品安全委員会への食品健康影響評価の依頼について

・https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/2/1/2_1_23/_pdf 健康食品の見分け方 小内亨 日本補完代替医療学会誌 Vol. 2 (2005) No. 1 P 23-36
・『コエンザイムQ10の基礎と応用』日本コエンザイムQ協会/編 丸善出版
・『誰も知らないサプリメントの真実』 高田明和/著 朝日新書
・『真に受けてはいけない 氾濫する健康・ダイエット商品の恐いウソ』洋泉社ムック編集部/編 洋泉社
・http://www.hajime-clinic.com/ 医療法人社団 桐英会 はじめクリニック
・マウスにおける還元型コエンザイム Q10 と運動トレーニングが酸化ストレス防御系と運動能力におよぼす影響 丸岡弘 藤井健志 日本補完代替医療学会誌 Vol. 8 (2011) No. 2 P 85-97
・http://www.wakasanohimitsu.jp/seibun/coenzyme-q10/ わかさ生活 コエンザイムQ10
・『病気になるサプリ』 左巻健男 幻冬舎新書

情報提供、コメント、質問を歓迎します。

(最終更新日時2015年8月17日)

投稿

投稿&回答

質問です。

消化吸収についてである。食事(外部)から摂取されたコエンザイムQ10は小腸内で吸収されたのちリンパ管を経由して血液に流れるのだが、その吸収率が低いことが指摘されている(摂取した量の60%は吸収されずに排泄されるとの指摘がある(1)(2))

↑との説明についてですが、現在コエンザイムQ10には吸収型というコエンザイムQ10をシクロデキストリンによって包括することで吸収率を上げた製品が存在し、1つの実験においてはその有効性が確認されているようです。

健常男女24名を対象にした無作為クロスオーバー比較実験で通常のコエンザイムQ10と吸収型のコエンザイムQ10において大きな差が出ており、コエンザイムQ10は吸収率が低いというふうにはいえないのではないかと思いました。

以下が当該実験の詳細な手順などを記したURLなのですが
第54回 γシクロデキストリンによるコエンザイムQ10の生物学的利用能の向上|株式会社 シクロケムバイオ www.cyclochem.com/cyclochembio/research/054.html

こちらの実験手法などから総合して、コエンザイムQ10の吸収率について再度評価をしていただきたいです。

どうぞよろしくお願いいたします。 (投稿者:ひろき,投稿日時:2017/11/20 13:16:51)

ご投稿ありがとうございます。
たいへん有益な情報提供だと思います。
まず、記載された文献のほうから調査してみます。
そののち、評定内容本文、あるいはこのコメントの回答欄に追記いたします。 (回答日時:2017/11/21 11:04:36)

順天堂越谷病院で臨床試験への参加を呼び掛けています。
http://www.juntendo-koshigaya.jp/clinic/neurology/q10.html

水素水を飲む群があるのは不思議ですが、以前水素水とパーキンソンでも募集をされていました。
http://www.juntendo-koshigaya.jp/clinic/neurology/poster02.html

2013年に臨床試験登録情報があり、2015年で試験継続中となっていますが、結果を見ることはできないのでしょうか?水素水の話題になりましたが、よろしくお願いします。
https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000010386
(投稿者:kassy,投稿日時:2016/06/06 10:59:21)

ご投稿ありがとうございます。 (回答日時:2016/06/10 10:22:24)

お役に立つかわかりませんが、横浜の野毛山動物園にいた高齢のラクダの最期、コエンザイムQ10で生き延びていたようです。なにか有用なデータがあるかもと思いご連絡まで。 (投稿者:津軽さん,投稿日時:2016/05/21 00:44:17)

ご投稿ありがとうございます。
調べてみます。 (回答日時:2016/05/24 14:21:12)

還元型コエンザイムのサプリメント100mgを毎日一粒飲んでます。
たぶん、2年は飲んでいると思います。
飲むのは中止にしたほうがいいのでしょうか?
(ちなみに30代、健康状態は良好、特定疾患なしです) (投稿者:ねこ,投稿日時:2016/05/08 03:57:14)

ご投稿ありがとうございます。
日常的に100mgは、医薬品の規定値(30mg/日)からすると多いように思います。
目的によりますが、ご自身が「現在健康」であるならば、それほど積極的に摂取する必要はないかと……。
ただ、サプリメントを飲む「行為」がご自身の健康のバロメーターとして働いている考え方もありますので、そのあたりは体調と相談しながら、でしょうか苦笑。
(回答日時:2016/05/16 09:25:46)

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